誰が何を言っても、お母さんは絶対に病院に行かなかったと言う事。
彼女を一時的に施設に預けては、と言う話が出た時、お母さんが拒絶したと言う事。
お母さんが時々アルバムの写真を見ながら、お父さんの事を話してくれたと言う事。
その時のお母さんは本当に楽しそうだったと言う事。
「楽しい思い出がたくさんあるの。」口癖のように、そう言っていたと言う事。
「楽しい時があるからね。」そう言って抱き締めてくれたと言う事。
お母さんと最後に話した時「お兄ちゃんにお礼、言ってね。」そう言っていたと言う事。
記憶と聞いた話を彼女の中で整理しながら、ゆっくり話してくれた。
何で話すのか。どんな顔してればいいのか。解らなくて。彼女の方に視線、向けられなかった。
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