50: 名も無き被検体774号+ 2014/03/12(水) 08:35:30.40 ID:zSMs1Lti0
なんだこの女。
なんなんだこの女は。「いっしょに逃げてくれる?」先生は言った。「きみは、いっしょに逃げてくれる?」
なんなんだこの女は。「いっしょに逃げてくれる?」先生は言った。「きみは、いっしょに逃げてくれる?」
こんなの、僕の手に負えるわけがないじゃないか。
「なにを言ってるんですか」
上手く発音できたかどうか、自身がない。
「なにを言っているんですか、先生」
意を決して、水に足を入れた。
文字通り、凍り付くようだった。
冬の海は、明確な死のイメージを以って、コンクリートの際を染め上げていた。
こんなの、僕の手に負えるわけがないじゃないか。
人殺しの目のほうが、まだあたたかいってものだ。
こんな黒のなかを、あんな覚束ない足取りで進んでいける彼女はいったい、何を思って日々を生きてきたというのか。
動け、動け。
そう念じる。
がたがたと震え続ける上半身など、もうどうでもいいから。
この二本の脚が動いてくれないと、もうどうにもならないのだから。
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