美しすぎる学校の先生が不登校になってしまったので家にお見舞いに行った結果・・・

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42: 名も無き被検体774号+ 2014/03/12(水) 08:19:08.47 ID:zSMs1Lti0

「電車よりは、車のほうがいいよ。ぜったい。終電もないし」

枯れるほど泣いた先生は、その目はまだ赤らんでいたけれども、不自然なほどにあっけらかんとしていた。
つきものが落ちた、というやつなのかもしれない。

「僕、免許なんてないですよ」

「なに言ってるの。わたしが運転するに決まってるじゃない」

未だぺたんと座ったままだった彼女は、ふわりと立ち上がった。

「それに、わたしがきみを連れて電車に乗ったりなんかしたら、危ないんだから」

「どうしてですか?」

「だって、その、ほら……いかにも人さらいしてるみたいになっちゃう」

それはちょっと、自意識過剰というものだろう。
先生は確かに綺麗だが、しかし、僕と比べて極端に大人びて見えるというわけではない。
ユウキのほうがよっぽど大人らしいというものだ。

「なんで笑ってるの」

「いえ、別に、そんなことはないですよ」

手ごたえがあった。
この時の僕は、確かに正解の道を選んだという気がしていた。
これからどうしていけばいいのか、なにを言えばいいのか、どこに行けばいいのか。
そんなことは何一つとしてわからなかったけど。
でも、これでいいのだと思った。
間違っていないのだと感じていた。
だって、先生が笑っているのだ。

大したものは持って出なかった。
財布の入ったハンドバッグと数冊の文庫本を右手に抱えた先生は、空いている左人指し指にキーホルダーをひっかけてくるくると回す。
居室を出る直前、僕はもう一度室内を振り返る。
壮観だ。なんとも最悪に壮観だ。いいじゃないか。なんたって僕らは今、ここから逃げ出すのだ。この場所は、悪ければ悪いほどいい。

すがすがしい気持ちの中に、ちくりと、不吉があった。凄惨な部屋の一部、針の山から僕はそれを取り上げる。

「いこう?」

片方だけ靴を履いた先生が、玄関から僕を振り返って呼ぶ。
僕は慌てて、その細長い不吉を、スクールバッグに押し込んだ。

いいさ。今は、考える必要のないものだ。

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