57: 名も無き被検体774号+ 2014/03/12(水) 08:48:01.60 ID:zSMs1Lti0
「二人は付き合ってたんだね」
「それはどうだかな」
自嘲するように、ユウキは頭を振った。
「前にも言わなかったか。特にそんな、明確に付き合ってたような感覚はねえよ。一方的に俺が押しかけてたようなもんだし」
「先生はユウキのことを好きだったと思う」
その一言を、何気なく口にすることに、どれだけ僕は苦心したか。
しかし、認めざるを得ないだろう。
彼女は引っ越していった先、東京の居にまでも、ユウキの使った歯ブラシを持っていったのだ。
それを捨てるに忍びないという感情が、彼女の中にあったことは間違いないのだ。
「フラれた男に対しては、無神経な慰めだな」
「そんなんじゃないよ」
僕に言われるまでもなく、ユウキはわかっているはずだった。
だってそうだろう?
この男はわざわざ、自分の学年を繰り下げてまで、先生を追いかけてきたのだ。
到底、先生を諦めきれているわけではない。
「望みがあると思ってるんだ」
はっきりと告げる。
そしてたぶん、恋愛的にいってそれは正しい。
現実的にはどうかわからないが。
先生とユウキを引き裂いたのは、どこまでも現実的な要素であっただろう。
この二人が恋仲であったのは、そう昔のことではあるまい。
歳の差を考慮すれば、やはり今のように、先生は教師で、ユウキは生徒であったはずなのだ。
そこにどんな苦悩があったのか、それは決して、僕の口からは語れることではないのだろう。
僕に推測できたのは、その苦悩の結果だけだった。
先生はユウキと離れた遠い地に旅立つことにした。
それをユウキは追ったのだ。
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