40: 名も無き被検体774号+ 2014/03/12(水) 08:14:24.91 ID:zSMs1Lti0
久しぶりに、先生から名前を呼ばれた。
苗字を、くん付けで呼ばれた。消え入りそうな声というか、音のようなもので以って、彼女は僕に呼びかけた。
スローモーションのような緩慢さで、彼女が頭を上げる。
黒髪のすだれを割って白い顔が覗く。今度こそ、本当にやばいと思った。その顔には、まったく表情がなかったのだ。
これだけの光景のなかにいて、
これだけの境遇のなかにいて、
爪が剥がれている身でいても、
彼女は、なにも、なにもその顔に浮かべていなかったのだ。
苗字を、くん付けで呼ばれた。消え入りそうな声というか、音のようなもので以って、彼女は僕に呼びかけた。
スローモーションのような緩慢さで、彼女が頭を上げる。
黒髪のすだれを割って白い顔が覗く。今度こそ、本当にやばいと思った。その顔には、まったく表情がなかったのだ。
これだけの光景のなかにいて、
これだけの境遇のなかにいて、
爪が剥がれている身でいても、
彼女は、なにも、なにもその顔に浮かべていなかったのだ。
どこか遠くに逃げなくてはいけない。そう思った。
こんなところに、こんな風に、先生は、もう、ああ、とにかく、
こんなところにいてはいけないんだ。そう思った。
先生はきっと、何かに殺されてしまいそうなのだ。
何かに? なにかにとは、なんだ? そんなの知るか。知りたくもない。
学校に行かないということは、そんなに悪いことなのだろうか。知らなかった。
学校に行かない人間は、不登校児は、僕たちのような人間には及びもつかない暗いところへ、連れていかれてしまうのだ。
連れていかれて、そうして、人知れず、消されてしまうのだ。そうに決まっていた。
とにかく、どこかに先生を、先生を連れていかなくては。
勇気をくれ。そう願った。
旧友は、あの不登校児を助けた。本人がどう思ってるかは知らないが、とにかく、彼はやり遂げたのだ。
僕にも、同じようにできるだろうか。
そんなのは、知ったことじゃない。
僕にできるのは、僕にしかできないことだ。僕にしか言えないことだ。
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