……ななこさんの、結婚だ。
オラが小学校の時のことだった。
ななこさんは就職し、同じ職場の男性と結婚した。
とても、いい人だった。その人を見た時、オラは全てを諦めた。この人なら、ななこさんを幸せに出来る――小学生ながら、生意気にも、そんなことを考えていた。
しかしまあ、ひたすら泣きまくったものだ。
そんなオラに、父ちゃんは言った。
『想いが成就することは、人生の中では少ない。人は誰かと出会い、想い、こうして、いつか想いを断ち切らなければならない時が来る。人生ってのは、そうやって繰り返されていくものだ。
――でもな、しんのすけ。大切なのは、その時に、どういう気持ちでいられるかってことだ。
ななこさんは、きっと幸せになる。本当にななこさんの幸せを思うなら、彼女の門出を祝ってやれ。
泣きたいときは、父ちゃんが一緒に泣いてやる。だから、祝ってやれ。それが、お前に出来る、最大の愛情表現だ―――』
そしてななこさんは、結婚した。
今では、二児の母となっている。時々家にも遊びに来る。幸せそうな彼女の笑顔を見ると、こっちまで幸せになる。
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