そう思い立った理由は言わなかった。聞けば答えてくれたかもしれないけど、どうしてだか、聞こうとは思わなかった。
それは、きっと彼女の口から、誰にも促されることなく聞きたかったのかもしれない。
彼女が何を思い、何を感じたのか……それは、オラが容易く聞けることではないのかもしれない。
そう、思った。
だからオラは、あいちゃんを連れて電車に乗った。
……実のところ、黒磯さんには密かに連絡を入れている。警察に届けられたら色々と面倒だろうし。
黒磯さんはすぐにでも迎えに行くと言ったが、オラが断った。
それがあいちゃんの意志であることを告げたら、黒磯さんはそれ以上止めなかった。
そしてただ一言、オラにこう言った。
「――お嬢様を、よろしくお願いします……」
「――うわあ!しんのすけさん、見てください!海がとっても綺麗です!!」
電車を降りると、目の前には一面の海が広がっていた。
その駅は、海岸沿いにある小さな駅。駅員はいないようで、いわゆる無人駅のようだ。
降りたのはオラ達だけ。……というより、ここまで来ると、電車に乗っているのはオラ達だけだった。
ボロボロのホームにも、オラ達しかいない。
高台にあることから、裾には景色が広がっているが、遠巻きに見ても誰もいない。
……それにしても、駅からの光景は、オラですらも声を漏らしてしまうものだった。
見事に晴れた空と、空の色を写した海は、遠くに見える水平線で交わる。
空気には潮の香りが漂い、遠くから波の音が微かに聞こえていた。
まさに、この絶景を独り占め……もとい、二人占めしている気分だった。
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