「……四郎さん、オラもね、強くはないんですよ」
「……しんちゃん……」
「父ちゃんと母ちゃんが死んだとき、オラ、どうすればいいのか分からなかったんですよ。それまで当たり前のようにいた二人がいなくなって……目の前には、泣きじゃくるひまわりしかいなくて……。
……本当はオラだって、ただ泣きたかったんです。でも、ひまわりがいる以上……お兄ちゃんである以上、それは出来ませんでした。
オラまで泣いてしまったら、この子はきっと、オラよりもどうすればいいのか分からなくなる……そう、思ったんです」
「……お兄ちゃん……」
「……正直ね、すごくキツかったんですよ。感情を素直に出すひまわりを見て、何度も羨ましく思ったんです。
どうしてこの子ばかり泣けるんだろう。どうしてオラばっかり強がらなきゃいけないんだろう……そんなことさえ思うこともありました。
――授業参観も、風邪引いた時も、進路指導も、卒業式も、入学式も……オラの隣には、いつも泣き続けるひまわりしかいませんでした」
「………」
ひまわりは、目を伏せた。それを見ると、やはり胸が痛くなる。
この話は、誰にも話したことがなかった。だけど、今話さないといけないと思った。
「……でも、心が潰れようとした時に、ひまわりはいつも笑うんですよ。笑いながら、お兄ちゃんお兄ちゃんって言って来るんですよ。
何だか笑えませんか?本当はキツいオラに、笑いかけてくるんですよ?
……もう、笑うしかないじゃないですか……そんな顔されたら、どれだけ辛くても、笑い返すしかないじゃないですか……。
……でもね、不思議なんですよ。笑ってると、それまで締め付けられていた気持ちが、何だか楽になるんですよ。
――そん時、オラ気付いたんです。
ひまわりを支えようと思っていたけど、支えられていたのは、オラの方だったって」
そしてオラは、四郎さんを見た。彼はただ黙って、オラの話を聞いていた。
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