106:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 01:37:35.71 ID:fYxgD7+A0
高校卒業を真近に控えた2月。
俺の進学する大学は2県離れたところにあったので、
一人暮らしの準備を着々と進めていた。
一人暮らしへの期待が高まる半面、元来人見知り気味な俺は、
大学で友達が出来るのかどうか不安を抱えていた。
そんな時、大学から「推薦合格者の懇親会」への誘いが来た。
主催はどうやら学校側ではなく学生の自主運営らしく、
「推薦で早く合格が決まって、
入学までのいたずらに長い期間の不安を少しでも解消するために」
という趣旨のもと行われるイベントらしかった。
107:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 01:40:15.97 ID:fYxgD7+A0
参加してみると、内容は「学校公認の大規模な合コン」。
それ以上でもそれ以下でもなかった。
参加者には「友達シート」というプリントが配られ、
名前と出身地と電話番号、メアド等が書けるようになっていた。
一日班ごとのゲーム大会等をして過ごし、
最後の「フリートークタイム」で、仲良くなりたい人と友達シートを交換し、
連絡先をゲットするというのが大まかな流れだった。
109:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 01:42:16.88 ID:fYxgD7+A0
夢の一人暮らし開始に先駆けてスムーズに相手をゲットしたかった俺は、
ここで連絡先を入手した女の子5人へのメール攻撃を開始し、入学への下準備を始めた。
5人のうち、そのまま入学後も「友達」になれそうなのは2人、
その中でも「のり(仮名)」という女の子とは、お互い一人暮らしを始める
不安等を共感出来る事から意気投合した。
111:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 01:46:21.03 ID:fYxgD7+A0
入学初日、「推薦合格者の懇親会」で仲良くなっていた
同じ学部の男友達と数人で行動していたが、
その後の「今日は皆で飯食って帰ろうぜ!」という誘いは断った。
何故なら、のりと「初日は一緒にご飯を食べよう」という約束を取り付けていたからだ。
大学の最寄駅でのりと待ち合わせた後は、
地下鉄に乗って中心街まで出て下調べをしておいた小洒落た料理屋?
みたいなところに行った。
たっぷり飯食って、ちょっと背伸びして奢って、そのまま地下鉄に乗って大学近辺まで戻り、
「ちょっと寄っていかない?」という事で部屋に連れてくる事に成功した。
112:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 01:49:46.74 ID:fYxgD7+A0
結論から言うと、部屋ではのりに手を出す事は出来なかった。
のりの気取らなくてユーモアがある所とか、天真爛漫な笑顔に接してるうちに
少し本気で好きになってしまったからだった。
話しこんでいるうちに終電を逃してしまい、のりのアパートまで徒歩で送る事にした。
距離にして、歩くと4~50分はかかる距離なのでのりは最初遠慮したが、
お互いまだまだ話足りないという事で、二人でのんびり歩いていく事になった。
桜が咲き始めたとはいえ、4月初頭のまだ肌寒い季節。
のりは突然、「こうした方が暖かいよ」と言って俺の右手を握った。
今までセクロスの事しか考えず、会って突っ込むような事しかしてこなかった俺が、
自力で出会った人と自力でそれっぽい恋愛してんなーなんて事に感慨深さを覚えた。
手を繋いでのりの家まで送っていき、別れ際にキスをした。
113:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 01:52:19.53 ID:fYxgD7+A0
その日、遅くに一人歩いて帰る俺を心配したのりが、買いたての自転車を貸してくれた。
「明日授業終わったら取りに行くから。朝は電車で通学するから大丈夫だよ。」
翌日、のりが自転車を取りに家を訪れた時、俺は完全に彼氏気取りでのりを迎えた。
何となく暗い顔で家に入ったのりは、前日の事について全力で謝り始めた。
114:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 01:54:57.85 ID:fYxgD7+A0
かよの謝罪の内容を纏めると、
・昨日は気があるような事をして申し訳なかった。大学生になって浮かれていた。
・1君の事は良い人だと思うけど、地元に忘れられない人が居るから好きにはなれないと思う。
・1君には、落ちるかわからない私を見るんじゃなくて、もっと有意義な恋愛をしてほしい。
・でも友達としては仲良くしたいから時々遊んだりしてほしい。
みたいな内容だった。
事実上の失恋を告げられたわけだが、初めてまともに好きになった人
を簡単に諦めるわけにはいかなかったので、
翌週の土曜日に一緒に近くの神社で花見をする約束だけを取りつけた。
117:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 02:00:24.71 ID:fYxgD7+A0
花見当日。
俺とのりは、俺の部屋のキッチンで一緒にトンカツを挙げ、玉子を茹で潰し、
二人でサンドイッチを作った。
二人で作ったサンドイッチを桜の木の下でほおばりながら、初めて
「人を好きになって恋愛するって、こんなに安らかで幸せな気分になれる物なんだなぁ」
と実感した。
のりは二人で揚げたカツサンドを頬張りながら、
「やっぱり1君と居ると話も弾むし落ち着くしで良い事づくめだね!!
私もそろそろ先に進まなきゃなぁ」
と言った。
部屋に戻ってから、結局俺とのりはした。
大切に、少しずつ頑張って自分に振り向かせようと頑張ってきたのに、
結局手を出してしまう自分が嫌で仕方がなかった。
118:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 02:02:55.82 ID:fYxgD7+A0
何だかんだでなし崩し的にのりと付き合うようになったわけだが、
セク口スから始まる交際などまともに続くわけがないのはさんざん前述した通りである。
結局2カ月もしないうちに破局を迎えた。
のりと付き合っている期間はほぼ大学にも顔を出さず、
のり以外の友達を作る努力を怠っていた俺には、
新しい友達が全く出来ていなかった。
入学前に推薦入学者懇親会で出来た友達は、もう新しい友達の輪を作ってしまい、
入りづらい感じになってしまっている。
入学2カ月にして、最も恐れていたぼっち展開が訪れてしまった。
115:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 01:57:35.53 ID:5ab2tplCi
親は何してんの?
119:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 02:07:08.78 ID:fYxgD7+A0
>>115
父親は自営業。母親は医療系。
ぼっちを解消するため、
俺は軽音楽系のサークルに入部した(高校時代のバンドは、地元を離れるため脱退した)。
それなりに経験と技術があったので最初こそ重宝された。
しかし高校時代からオリジナルのバンドを組み、
ライブハウス関係者の超体育会系社会や厳しいノルマ追及を経験しながら
活動してきた俺にとって、
サークルのバンド活動は拍子抜けするほどぬるい物だった。
120:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 02:08:08.65 ID:fYxgD7+A0
何となく俺のそういう心情が行動から漏れていたらしく、
入部して一カ月もしないうちに
「ちょっとキャリアがあるからって調子に乗りやがって」
「見下しやがってウザい」
と陰口を言われ激しく嫌われた。
結局優しい先輩が
「言いにくいけど君ほぼ全員から嫌われてるから、
早く辞めて余所のサークル探した方が有意義に大学生活送れると思うよ。」
と助言をしてくれたのをきっかけに、そのサークルを去った。
121:名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 02:11:09.48 ID:fYxgD7+A0
人に面と向かって拒絶をされた事、
自分の人間性が他人に好かれない人間性だと再認識した事などから、俺は帰って泣いた。
ひとしきり泣いてから、
「自分が本当にダメなのか、誰からも好かれないのか、
最後に1チャレンジだけしてから決めよう。
それでダメなら今後4年間のぼっち生活を受け入れよう。」
と決心した。