小学校の先生との初恋を貫いた結果・・・

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146:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:29:36.78 ID:+beSXCVE0
>>145
大丈夫ですよ。お気遣い、ありがとうございます。

146:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:29:36.78 ID:+beSXCVE0
内定取り消し…正確にはまだ正式に内定通知書が来ていた訳ではないが、
本来ならもうすぐ2社から届くはずだった。

ところが先日、2社から内定通知書は送付できないと相次いで電話が掛かってきたそうだ。

1社だけならまだしも、立て続けにこんな連絡が入るのはおかしい。
そう思った担任は、担当者に掛け合ってみた。
すると2社とも、私の素行がかなり悪いという密告の様な電話が掛かってきたのだと、そう言った。

具体的にどういう事を言われたかまでは教えてもらえなかったが、
とにかくそんな人物を採用する事は出来ない…そう言われたそうだ。

話し終えると担任は「すまない…」と悔しそうに言った。
私は呆けつつも、黙って頷いた。

帰り道で色々考える。

一体誰がそんな電話をしたんだろう?
友人?私を嫌いな誰か?…まったくわからない。

これから先…どう生きていけばいいんだろう…

ただ漠然とした不安を抱えながら、私は家の玄関を開けた。

148:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:31:31.62 ID:+beSXCVE0
リビングに入ると、母はいつものように酒を飲みながらテレビを見ていた。

「お母さん。」

母がかったるそうに「ん」と返事をする。

「…就職、ダメになった。」

母の後姿が一瞬固まる。
でもその次の瞬間には物凄く嬉しそうな笑顔で、バッとこちらに振り向いた。

「あ~そお~?残念だったねぇ~困っちゃったね~アハハハハ」

妙に上機嫌だ…何かがおかしい。

私はハッとして自室に駆け上がり、机の引き出しを開けた。

「………」

入れていた筈の、2社から渡された封筒と担当者の名刺は、綺麗に無くなっていた。

様々な点が繋がる様に、私の疑問が結ばっていく。

私は脱力していく体を引きずる様に、階段を降りた。


149:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:33:45.15 ID:+beSXCVE0
「…お母さん。」

母は鼻歌を歌いながら、「なぁに?」と笑顔で返事をする。

「…何したの?私の部屋に勝手に入って、何をしたの?」

母が笑顔のまま固まる。

「机の引き出し開けたよね?中に入ってる物、どうしたの?何をしたの!!!」

私は思わず怒鳴りつけていた。
長いこと忘れていた怒りの感情が、ジワジワと沸いて来る。

母はしばらく目を右往左往させていたが、急に顔を歪ませ、
何やら泣き叫びながら私にしがみついてきた。

「だってぇ!だってあの紙なんて書いてあったと思う!?」
「紙?」
「そうだよ!あの紙!!!!!!寮って書いてあったんだよぉ?寮って寮でしょぉおお!?」

意味が解らない。

「だったら何なのよ!!!」
「許さない!!!!ここを出て行くなんて許さない!!!!許さないんだからああああ!!!!!!」

血走った母の目が、私を睨みつけている。
スーッと怒りが抜けていく感じがした。

この人から逃れるなんて、私には出来ない事だったんだな……

悔しさと絶望で、私の思考はまた止まって行った。

150:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:35:36.79 ID:+beSXCVE0
絶望に打ちひしがれていても、時間だけはあっという間に過ぎていった。

3学期が始まり2月に入ると、3年生は徐々に登校日は少なくなっていく。

そんな中で周りの生徒達は、確実にある未来に目を輝かせ、キラキラしている。
私にはそれが眩し過ぎて、その数少ない登校日にも学校に行くことが少なくなっていった。

何も考えられず、何もやる気が起きず、私はいつの間にか笑うことも話すことも殆ど無くなっていた。

友人達は心配してくれていたが、でもそんな状態の私にどう接していいのか解らなかったらしい。
少しずつ少しずつ、私から離れていくのが解った。

私の人生はこれでいい。これでようやく元に戻ったんだ……

毎日毎日、ただひたすらそんな事を考えて暮らしていた。

152:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:38:57.67 ID:+beSXCVE0
卒業式を間近に控えたある日。

久しぶりの学校から戻ると、玄関には男物の綺麗な革靴が置かれていた。
中から母の嬉しそうな話し声と、男の人の声がする。

いつの間に男引っ掛けたんだ…?

そう思いながらリビングに入る。
母はもの凄い笑顔で私を見た。

「なぎお帰り~あ、この人ね、なぎを迎えに来たんだよ~」

はぁ?っと思いながら男を見る。
私と歳がそう変わらなく見えるチャラい感じの男が、これまた物凄い笑顔で私に頭を下げた。
つられて私も小さく頭を下げる。

「あー娘さん!お母さんに似て美人ですねー!これならもう余裕でオッケーっすよ。」

母と男が楽しそうに笑った。

「…迎えって何?」

かったるく母に聞く。

「なぎのね、面接してくれるんだって~だから今から一緒に行ってきて~♪」

はぁ?っと声に出すと、すかさず男が会話に入ってくる。

「いや~お母さんとは昔っからの知り合いでね、渚さん…でしたっけ?就職に失敗して困ってるって電話が来たもんだから。」
「そうそう~電話したの~♪」
「それならウチで働くのはどうかなぁ?って思って、ウチの店長に話してみたんっすよ。」
「そうそう~♪そしたらね~、じゃあ今日面接に来いって言ってくれたみたいで~」

母と男は楽しそうに話を続ける。

「そうなんすよ。だから今から一緒に来て、面接受けてください。店長待ってますから。」

153:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:40:35.38 ID:LUqPOmqkP
なんだよ…うそだろ…

どうなっちゃうんだよ…

154:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:40:43.06 ID:+beSXCVE0
何だか碌な予感がしない。

「…嫌です。」

私はキッパリ断った。
私がそう言うと、男はさっきまでの笑顔から一変、今度は物凄く険しい顔をした。

「…困るんすよねぇ来てくれないと。わざわざ店長まで待たせてますからねぇ。」

男がギロリとした目で、私と母を交互に見る。
母は焦った様に私に叫んだ。

「さっさと行って来ればいいの!早く用意して!」

行かなきゃ何だかエライ事になりそうだ…
私は諦めて頷いた。

直ぐに部屋に戻って制服から着替える。
下に戻るともうすでに男は消えていた。

「早く行って~外の車で待ってるって~」

私は母を無視して外に出ると、男が待っている車に乗った。

155:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:42:39.03 ID:sMVE+LP3i
なんだよこの展開は……

156:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:42:44.07 ID:+beSXCVE0
20分くらい走った車は、小さな雑居ビルの前で停まった。

「オレ、車置いてくるんでちょっとここで待っててください。」

私は言われるがままに降りると、辺りを見渡した。
場所は地元で有名な風俗街。
何となく予想通りの光景に、私は特に驚く事も無く男を待った。

「いや~お待たせしました。じゃ、入りましょっか。」

直ぐに戻ってきた男に促され、私はビルに入った。
ビルのタバコ臭い空気が気持ち悪い。
階段を降りてすぐの扉を開けると、男は「てんちょ~~~!」と大声で叫んだ。

男の後に続きながら、部屋全体を見回す。
部屋の真ん中に小さいステージがあって、その周りにはフカフカの少し汚いソファが並べられている。

ステージ脇の小さな扉から、ガラの悪そうなヒョロリとした男が顔を出した。

「あ、店長!連れて来ましたよ~。」

男がヘラヘラと笑いながら言うと、店長らしき男はじろりと私を見た。
そしてヘラ男を手招きで呼び寄せ、なにやら小声で話をしはじめた。
へラ男は何度か頷くと、走って私の元に戻ってきた。

157:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:44:36.80 ID:+beSXCVE0
「今からそこのステージに立って、少しだけ歌ってもらいますね~」

私はビックリしてヘラ男に聞き返す。

「歌ですか?」
「そうっすよ~なんでもいいんで、テキトーに歌ってください。」

私は促されるまま、ステージの上に立った。
適当に、当時流行っていた曲を歌う。

歌い始めて早々に店長は私を止めた。

「わかった。歌はもういいから、脱いで」

言われて思わず体が固まった。

「ほら、早く脱いで。下着もね!」

ヘラ男の焦った様な声がする。

あぁ…やっぱりこうゆう事か……私はなかば半笑いで服を脱いだ。

店長とヘラ男は、じーっと私を見ている。
不思議と、恥ずかしいとも嫌だとも思わなかった。

「OK、それならいけるね。もう帰っていいよ。」

店長はそういうと、またさっき出てきた部屋に戻っていった。
ヘラ男が嬉しそうに近づいてくる。

「いや~よかったね!あ、もう服は着ていいよ。家まで送るね。」

私はまた、そそくさと服を着た。

158:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:46:53.17 ID:+beSXCVE0
「渚さん、来週卒業式っすよね?終わったら連絡ください。待ってますから。」

私を家の前で降ろすと、ヘラ男はそう言った。
私は返事をせずに車のドアを閉めて、さっさと家に入った。

「おかえりなぎぃ~♪どうだった~~~??」

上機嫌で話しかけてくる母を無視して、足早に部屋に戻る。
久しぶりに部屋に鍵を掛けると、私はベッドに突っ伏した。

母がまた、わざわざ私の部屋の前まで来てギャーギャー叫んでいる。

私は鬱陶しくなって、MDのイヤホンを耳に付けた。

もうこのまま消えてなくなっちゃいたいな…

ひたすらそんな事を考えながら、目を閉じた。

160:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:50:10.63 ID:+beSXCVE0
卒業式が終わる。

当たり前のように、母は出席しなかった。
友人達は皆、泣いていた。

式が終わってすぐに少しだけ懇親会のようなものが予定されていたのだが、私はそれに出る事無く高校をあとにした。

家に戻るのがなんとなく嫌で、あてもなく街中をブラブラ歩く。

街の賑やかな喧騒が耐えられなくて、私は人気の少ない小さな公園に向かった。
その公園は地元では有名な心霊スポットで、街を一望出来る綺麗な場所なのに、普段から誰も近寄ることが無かった。

どっかりとベンチに腰を下ろす。
私は携帯の電源を落とすと、ただボーっと空を眺めた。

思えば最初は天国、最後は地獄の高校生活だった。

先生と再会出来た事、大事な友達が沢山出来た事……色々な思い出が、頭を駆け巡る。

何だか疲れちゃったな……

そう思いながらボーっとしていると、空はあっという間に暗くなっていった。

161:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:52:56.40 ID:+beSXCVE0
辺りが完全に暗くなった所で、私は時間を見るために携帯の電源を入れた。

時間はもう6時過ぎ。

着信履歴は母からのもので埋まっていた。
ボーっとしながら履歴のページをめくっていく。
不思議な事に5時を過ぎた辺りで、母からの電話はピタッと止まっていた。

あーあ…やっちゃったー…なんか色々と大変な事になってるんだろうな…

そう思いつつも、まったく家に戻る気が起きない。

なんとなくそのまま無心で履歴をめくり続けていると、最後の方で堺先生の名前が出てきた。

それを見て、指が止まる。

先生とはあの日以来、連絡を取っていない。
メールが来ることも、こちらから送ることも無かった。

ふと、先生の言葉を思い出す。

ー 人って結局、いつかは自分から離れていくじゃないですか… ー

離れないと決めたはずなのに、私は簡単に先生から離れていった。
その時は本気で離れないと思ったはずなのに、結局は先生の言うとおりになっている。
先生の悲しそうな顔が、思い浮かんだ。

瞬間、離れるのが正しかった事なのだと、私は自分に言い聞かせた。

こんな自分の泥沼のような人生に、もう先生を巻き込んじゃいけない。
そう思いながらも心のどこかでは、先生に会いたくて、このまま離れたくなくて、ダダを捏ねてる自分が居る。

ダメ…でも…いや絶対にダメだ……私は久々に味わう心の痛みに、葛藤していた。

162:名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:56:15.85 ID:+beSXCVE0
長い長い葛藤のあと、私は思いついた。

最後に一度だけ、先生に電話をしよう……それで心の踏ん切りをつけよう…と。

よくわからない緊張が、私を支配する。
コレが最後。と何度も自分に言い聞かせながら、私は思い切って携帯のボタンを押した。

「…………」

暫らく鳴らしても、先生は電話に出ない。

やっぱりそうだよな…出るわけ無いよな。でもかえってこれで踏ん切りがついた…。

そう思いながら電話を切ろうとしたその時、呼び出し音がブツっと急に止まる。

「……もしもし…」

先生の声がした。

「……もしもし…渚さん?」

久しぶりの柔らかい声に、胸が一杯になる。

「…お久しぶりです…先生。」

何とも言えない懐かしさで、私の心は一瞬で穏やかになっていった。