仲間内でみんながみんな片思いしあってた結果・・・

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168:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 20:19:47.23 ID:K0zg9wHr0
状況を把握できない私は「何やってるん?」とハルに訊ねた。
「座ってください」と教壇から指示するハル。
「先生ごっこか?」と言いつつも、ハルに従って真ん中らへんの席に着いた。
教壇から降りたハルは、私の隣の席に座った。
「何なん?w先生ごっこは?w」と聞きながらも、
なんとなく、先の展開は読めていた。

169:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 20:23:11.61 ID:K0zg9wHr0
「俺、アキのことが好きなんよね」
ハルが机に突っ伏して呟いた。顔は見えなかった。
ハルには申し訳ないが、やれやれ、としか思わなかった。
「気付いてた?」などと、両腕に顔を埋めて問うハルに、
私は露骨な呆れ顔で言った。
「なに夏と雪に影響されてるん?」
「えっ」とばかりに体を起こすハル。
「仲間内からカップル成立したんだし、まぁ気持ちは解るけどさ、
 冷静になれよ
 好きとかw
 夏と雪の恋愛モードに流されすぎw」

驚くことなかれ、私は当時、本心からこう言っているのだ。
それくらい、ハルの気持ちに微塵も気付いてなかった。

170:名も無き被検体774号+:2013/03/25(月) 20:27:23.90 ID:ktNyfY+D0
え!ハル…切ないー

171:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 20:30:03.11 ID:K0zg9wHr0
ハルは、あまり人の目を見ない。
一度目が合うと反らしたりはしないんだけど。
そんなハルが、不愉快そうに私をジッと見つめた。
「気付いてなかったのは、アキぐらいやし」
え?と反射的に声が出た。
「夏も雪も、俺の気持ち知っとるよ」

目玉が落ちるかと思った。
雪と夏が知っていたことにも驚いたけど、
その言葉で真実味が一気に増したからだ。

間抜け面だったと思う。
でも衝撃的すぎて、言葉も出なかった。
何も言えない私に、ハルは続けた。
「初めて廊下で会話したやん、あの時から、ずっと好きやった」

172:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 20:36:26.81 ID:K0zg9wHr0
初めて廊下で会話した、あの時。
夏が雪を見初めて、雪がハルを見初めた、あの時。
私もハルに見初められたと言うのか。
あの一瞬の空間で、三つの恋が同時に生まれたのか。
劇的な展開に、私は思わず笑った。
凄い、とすら思った。
前にも書いたように、運命的だ、と。
すげーすげーって、大口開けて笑った。
目の前で愛の告白をしてくれたハルを放って。
ハルも釣られてヘラッて笑ったから、
「ごめん、無理」と答えやすかった。
ヘラッと笑っていたハルはそのまま固まって、「やっぱり」と呟いた。

173:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 20:41:27.63 ID:K0zg9wHr0
「まだ夏が好きなんやろ?」
本日何度目かの衝撃。
ハルは私の気持ちを知っていたと言うのか。
「そりゃ解るよ。好きな人のことやもん」
そうだな、
私も、雪を見つめる夏に気付いてた。

174:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 20:45:23.38 ID:K0zg9wHr0
「最近、あまりにもアキが頑張り過ぎやから、告ろうと思った」
それどういう理屈?
「夏以外にも目を向けて欲しいし、
 放っとけんかったっていうか、
 俺が支えたいなって思ってさ」
このヌボーっとしたハルに、放っておけないと思わせるほど、
私は目に見えて「頑張っていた」のか。
自分の演技力の限界を感じた。

「俺、よく見てるからね」とハルは笑った。

175:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 20:49:15.60 ID:K0zg9wHr0
「ハルの気持ち知らんかったから、
 無神経なことしてたかも。ごめんね」と言う私に、
ハルは「確かに」と、いつも通り淡々と答えた。
「これから避けたりすんなよ」と、別れ際に言われて、
当たり前だ、と答えた。

教室に戻ると、夏と雪が神妙な面もちで迎えてくれた。
「断ったよ」と告げた私に、夏が詰め寄った。
「なんで!?ハルのどこが駄目なん!?」
雪がそんな夏を、まぁまぁ、と静めた。
夏は「お前には勿体ないわ、ばーーーか!!」と捨て台詞を吐いて、
ぷりぷりしながら去っていった。
きっとハルのフォローに行ったんだろう。
それにしても、なんて無神経な男なんだ。そこも好きだったけど。

176:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 20:51:14.54 ID:K0zg9wHr0
雪が「ごめんね」と呟いて、「帰ろう」と続けた。
雪は何も聞いてこなかった。

下校途中、
「雪はいつから気付いてた?ハルの気持ち」私がそう訊ねると、
「私がハル君に告る前からやね」と雪は答えた。
「じゃぁなんで告ったん?」の問いかけには、
「解らんねぇw」としか返ってこなかった。


182:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 22:24:51.22 ID:K0zg9wHr0
ハルとは全く気まずくならなかった。
それどころか、開き直ったハルは、毎日毎日私に絡んできた。
「アキ、おはよう」から始まり、
校内では意味もなく「アキ」と声をかけてくるハル。
昼休みは常に一緒だし、下校だって誘ってくる。
勿論かなりの頻度で、空の写メも送ってくる。
私とハルの噂が立たないわけがなかった。
全力で否定する私と、それを見て肩を落とすハル。
昔の自分を見ているようだった。

183:名も無き被検体774号+:2013/03/25(月) 22:28:30.23 ID:Lw16Rg4A0
ハルかわいいなww

184:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 22:28:47.32 ID:K0zg9wHr0
そうこうしてる時、もう三年生になっていた。
クラス替えがあって、何の因果か夏と同じクラスになった私。
ちなみに雪とハルは違うクラス。
お祭り男の夏はすぐクラスの中心になって、
私もまぁまぁ仲のいい子ができた。
雪とハルはクラスが離れてしまったから、毎日お昼は四人で集まった。
たまに各自友達連れてくることはあったけど。

変わらず、ハルは「アキ、アキ」と私を呼び、私を見ていた。
「好きな子まだできてないん?」と聞くと、
私を見つめて「おるよ」って、淡々と答えるハル。
私を諦める気はないのか、と自覚し始めていた。

185:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 22:30:39.56 ID:K0zg9wHr0
何度か夏がハルに女の子紹介したみたいだけど、
すればするほどハルの評判が悪くなってく…、と夏がぼやいていた。
女の子をその気にさせて、ばっさり切るんだって。
ハル本人はそんな気ないらしいけど。
でも何というか、
たまに私にヤキモチ妬かせようとしてる魂胆が見え見えだった。
呆れた。

186:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 22:31:51.94 ID:K0zg9wHr0
受験と並行しつつも、そんなゆるゆるした毎日を過ごしていた。
私はまだ、夏を友達として見れてなかった。
自分のしつこさにウンザリしていた。

187:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 22:34:58.37 ID:K0zg9wHr0
忘れもしない夏休み。

よく四人で図書館で勉強してたんだ。
そんなある日、夏と雪が、本棚に隠れて、軽くチューしていた。
お遊び程度のものだったけど、私はまたショックを受けていた。
やっぱりそんなの見たくなかった。
平気な顔で最後まで勉強して、一人打ちひしがれながら帰った。
ハルは黙って付いて来ていた。
別れ際に何かフォローされた気がするけど、耳に入らなかった。

188:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 22:42:48.67 ID:K0zg9wHr0
数日後、いつものように図書館で勉強していると、ハルに呼び出された。
私を人気のない廊下に連れ出して、
「夏に告ってきたら」と言った。
突然の提案に「はぁ?」としか答えられなかった。
ハル曰く、気持ちを伝えてないから、いつまでも引きずるんだ、と。
夏にアキの気持ちを知って貰って、
その気持ちをガッツリ拒否されたら、それはいい節目になる、と。

私もガッツリとハルの告白拒否したのに、
君も私を諦めてないやん、とは言えなんだ。

189:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 22:46:03.03 ID:K0zg9wHr0
告白しようなんて考えたことない、絶対そんな事しない。
そんな私の言い分に、初めてハルが切れた。
「夏には雪がおって、それは変えようもない現実!
 なのにアキはいつまでもその現実を見てない!
 見てる振りしてるだけ!」

痛いところを、突かれた。
反論できない私は、感情的にしかなれなかった。
「うるさい」
怒りを露わにして、私は一人帰った。

日課になっていたハルからのメールは、しばらくこなかった。

190:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 22:48:19.04 ID:K0zg9wHr0
夏と雪が、勉強の息抜きに花火に誘ってくれた。
最初は断ったけど、しつこい二人に根負けした。

私たちの地元の市民グラウンド。
ハルも来ていた。
よそよそしくて、目も合わなかった。
でもこんなんじゃ夏達に気を使わせてしまう。
私はいつも通りを装った。
ハルは相変わらずヌボーっとしてた。
でも、私をあからさまに避けていた。
どんなに話しかけても、どんなに笑いかけても、目を合わさないハル。

191:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 22:51:14.66 ID:K0zg9wHr0
持ってたペットボトルを、ハルへ投げつけた。
いつもはしつこいくらいアキアキ言うくせに!と、
ついカッとなってしまった。
不機嫌そうにペットボトルを拾うハル。
夏と雪が困惑していた。

「帰るわ」って、私はその場から逃げだした。
少し遅い時間だったけど、一人で地面を強く踏みながら帰った。
追いかけてきたのは、夏だった。

192:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 22:55:49.19 ID:K0zg9wHr0
「どうしたん?ハルになんかされたん?」
私の前に立って、とおせんぼする夏。
口を割ろうとしない私を、夏は近くの公園に拉致した。
ベンチに座らされて、夏に仁王立ちで問い詰められる。
それでも何も言えない私。
喧嘩の理由?そんなの言えるわけないじゃないか。
「ハルが夏に告れって言う」なんて。

193:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 23:01:54.66 ID:K0zg9wHr0
「追いかけてやってってハルに言われたから、俺が来たけど」
夏のその言葉に、心臓がわなわな震えた。
告らせようとしてるんだ、ハルは。
こんな時に、そこまでするなんて。
そして、私がここで何も言わずに夏と別れたら、
ハルはまた私に冷たく当たるんでしょ。
なんで私の気持ち無視して、勝手なことするの。
そんなに私に振られてほしいのか。
そんなに私を傷付けたいのか。
そう思った瞬間に、「いや、それは違う」と自覚した。

194:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 23:05:30.80 ID:K0zg9wHr0
本当は解ってる、
ハルが誰より、私を思ってしてくれた事だって。
でも、今は改心してる場合じゃない。
この怒りの勢いに乗らないと、できないから、告白なんか。
やってやるよ。
あぁそうだよ。ハルが正しいよ。
私が逃げてただけですよ。
苛々する。苛々する。
ハルの顔を思い出して、怒りを溜めて溜めて、

今しかない。

195:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 23:11:35.21 ID:K0zg9wHr0
「夏、ずっと好きやった」
やっとそれだけ振り絞れた。
ベンチに座って俯いてたから、前で仁王立ちしてる夏の顔は見えなかった。
でも目の前にある足が、一歩だけ後ずさりした。

言ったよ、言いましたよ、ハル君。
これでいいんでしょ。
あぁ本当。思った以上にスッキリしてきた。
もうヤケクソだ。
「中3の時から、しつこくあんたが好きでね」
そう言って夏を見上げたら、半笑いで固まってた。
あぁ、私もハルの気持ち知ったとき、
そんな顔だったのかも、とぼんやり思った。

196:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 23:14:56.01 ID:K0zg9wHr0
「え、え、今もってこと?」
やっと口開いた夏の目は泳いでいた。
「昔程じゃないけどね」と答えた。
「そうなんや、ごめん、俺知らんくて」
あっ、と思って、
「気付いてなかったのは、夏だけだよ」って
ハルの言葉を丸パクリしたんだ。
やっぱりその言葉は真実味が増すみたいで、夏はまた固まってた。

197:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 23:18:54.11 ID:K0zg9wHr0
二人でしばらく無言で俯いてて、
夏が私の隣に座った。
「こっち向くなよ。」って言って、
「ごめん。ありがとう。でも雪が好き」
ゆっくりとそう呟いた。
うん、としか言えなくて、また無言になった。

あーぁ。って思っていた。
でも不思議なくらい、胸がスーッと軽くなっていた。
「アキ、俺、何にも知らんくて、
 傷つけるようなこと沢山したかも、ごめん」
夏がそう言ったのを聞いて、
ハルから告られた時と全部が同じだなって、
笑ってしまいそうだった。
「私もハルに同じ事言ったよ」と言うと、「あぁっ」って声上げる夏。
「うちらまじややこしいよねw」って言ったら、
「まじやーん!!!」って、
やっと四角関係に気付いたみたいだった。

198:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 23:23:18.66 ID:K0zg9wHr0
少し二人で笑い合って、「花火戻ろうぜ」って言われた。
そうだな、ハルに報告しなきゃ。
夏と二人で、来た道を戻った。

「これが玉砕か…」と、不思議な爽快感に浸っていたら、
夏が「実はね、」と声を潜めた。
「俺、中2の時、アキ狙っとったんw」
ええええええええええ!!!っていう私の叫びが住宅街に響いた。
「タイミング悪いわ!!」って思いっきり突っ込んだった。
嘘か本当か解らないけど、そんな風に言ってもらえて、
少し嬉しくて、少し救われた気がしたんだ。
二人で笑い合って、グラウンドまで歩いた。
胸が暖かかった。

205:アキ ◆kB.Rp6wEqA :2013/03/25(月) 23:48:45.03 ID:K0zg9wHr0
グラウンドに戻ると、雪が私へ突進してきた。
何も聞かずに、私を見てニコニコしてた。
ハルも立ち上がってこっちを見ていた。
夏が早速花火を振り回して、私達を笑わそうとしていた。
私も花火をつけて、その花火をハルに向けた。
「あっぶね!」とワタワタするハルを、みんなで笑った。