高校の行事の勉強合宿で夏の山奥へ➡︎そこで忘れられない出来事が・・・

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91:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:12:51.05ID:cajVSWpJ.net
俺「MDウォークマン?」
俺がそう呟くと、女の子は恥ずかしそうに頷いた。

MDって! このご時世に、今だに使っている人がいたとは。
どうしてこんなものを使っているんだ。

茶髪の子「やっぱり変でしょ? キモいよね、こんなの」
茶髪の子「今時こんなの誰も使ってないって知ってるし」
茶髪の子「知ってるし……」
先ほどまでカラフルに色づいていた女の子の表情が、
たちまち曇っていくのが分かった。

92:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:18:49.73ID:cajVSWpJ.net
俺「別に全然キモくないよ」
俺「俺だって昔はよくMD使ってたし、お気に入りのは今でもとってあるしw」
そう言うと、女の子は安心したのか「ほんと?」と顔を上げた。

俺「それにMDって味があって良いと思うよ、俺は」
自分でも苦し紛れな事を言ってるな、と思った。
でも、そうでもしないと。余計なことで落ち込ませたくない。

なんでMDなんか? という疑問は心に残ったが、
俺はそれを一旦忘れることにした。

95:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:25:19.19ID:cajVSWpJ.net
それに、そのMDウォークマンは妙に使い込まれているようで、
普段これで擦り切れるほど音楽を聴いてるんだろうな、と思うと、
そんな疑問はどうでもいいように思えた。

俺「それにしてもブルーハーツがすごく好きなんだね」
茶髪の子「うん、大好き! 全部弾いてみたいなって思ってる」
俺は笑って「それはすげえな」と言ってしまった。

96:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:30:36.74ID:cajVSWpJ.net
俺「他には、どんなのを聴くの?」
そう質問すると、女の子は「ほかぁ?」と言ってしばらく考えた。

茶髪の子「ミッシェルとか、ブランキージェットシティーとか?」
俺「うっそマジ! 超いいじゃん!」
いずれも90年台の遠い昔のバンドだが、俺も大好きだったので驚いた。

茶髪の子「え、知ってるの? 分からないかと思った!」
俺「そりゃ、かなり昔のバンドだけどさ。俺も大好きだよ!」
茶髪の子「でもやっぱり、ブルーハーツが断トツで一番好きだけどね」
俺「それも分かるわぁ」

俺とこの女の子、なぜか妙に波長が合った。

97:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:33:14.93ID:cajVSWpJ.net
俺「でも、なんでそんなに昔の音楽ばっかり聴いてるの?」
中3の女の子の趣味にしては、あまりに違和感があるように思えた。

俺の問いに、女の子は少し苦笑いして答えた。
茶髪の子「家に、そういうMDしかないんだよ」
茶髪の子「だから古い音楽しか聴かないの」

俺「なるほどね、そういうことか」
納得してそう答えると、彼女はすぐに続けた。

茶髪の子「でも、それでも良かったと思ってるよ」
茶髪の子「じゃなきゃ、ブルーハーツにも出会えなかったし」
そう言うと、俺の方を見てにっこりと笑った。

98:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:35:22.98ID:cajVSWpJ.net
茶髪の子「ブルーハーツの歌を聴いてると、なんか元気が出てこない?」
茶髪の子「こんな自分でも頑張ろうって、なんかそんな感じにさ」
女の子の言葉に、俺は大きく頷いた。

俺「うん、分かる。かっこ悪くてもいいよ! ダメでもいいんだよ! みたいなw」
そう言うと、女の子は「そうそうw」と嬉しそうに何度も頷いた。

そんな風にブルーハーツ談義に花を咲かせていたが、
腕時計に目をやると、相当な時間が経っていたことに気づいた。

99:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:42:19.69ID:cajVSWpJ.net
俺「まずい、さすがにもう行かないとな」
茶髪の子「そっか、勉強に来たんだもんね」
女の子は、寂しそうに呟いた。

茶髪の子「ねえ、勉強って楽しい?」
そう聞かれて、俺は返事に困った。
そりゃあ、決して楽しいものではないけど……

俺が答えられずにいると、女の子は「ごめん、急いでるのに」と言った。

100:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:43:53.60ID:cajVSWpJ.net
茶髪の子「そういえば、名前聞いてなかった。聞いてもい?」
俺「ああ、そうだね! 俺は1だよ。そっちは?」

そう問いかけると、女の子は仄かに笑みを浮かべて、
「ヒロコ」でいいよ、と言った。(もちろんブルハの甲本ヒロトから)

ヒロコ「いつまでここにいるの?」
俺「一週間だから、来週の土曜日には帰るよ」
そう答えると、ヒロコは「そっかぁ」とだけ返事をした。

101:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:48:33.80ID:cajVSWpJ.net
俺が「じゃあね!」と言ってその場から去ろうとすると、ヒロコが「待って」と呼び止めた。
ヒロコ「あたし、大体いつもここにいるから」
ヒロコ「明日も、明後日も、雨さえ降ってなければいつも」

俺はそれに、「うん、わかったよ」と答え、小走りで境内を出て行った。

多分あれは、「また来てね」という事なんだろうか。
そう考えると、ちょっと嬉しくなった。
こんな見知らぬ田舎の山奥で、気心の知れた友達ができたように思えた。

102:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:49:42.76ID:cajVSWpJ.net
鬱蒼とした階段を降りて古ぼけた鳥居を抜けると、来た時よりも若干日が傾いていた。

神社の境内は木陰で風も通っていたので涼しかったが、
自転車で走り始めると、やっぱり焦れったい西日が身体に纏わりついて、死ぬほど暑い。

それでも見上げれば、頭上には青々とした空がどこまでも広がっていた。
「ブラウン管の向こう側~♪」
俺は思わずブルーハーツの「青空」を口ずさんでしまった。
ヒロコも、「青空」は好きだろうか?

103:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:51:07.76ID:cajVSWpJ.net
その後、大急ぎで宿に戻った俺だったが、
担任には怒られ、ジュースを忘れたことで女子からもブーイングを受け、散々だったw

でも、俺の心にはヒロコのことが焼き付いていた。
他人を寄せ付けないような明るい茶髪、煙草、最初は明らかにやばいと思ったが、
話してみればなんと気の合う子だったことか。

一体あの子は何なんだろう?
そんな気持ちが俺の心を占めつつあった。

104:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:51:56.45ID:FLDdd0d2.net
キュンキュンする~


105:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:54:08.53ID:cajVSWpJ.net
夕食の時間、食堂で隣に座った武智に話しかけられた。
武智「なあ1、お前買い出し行った時何してたんだよ?」
俺「何って? 別に何も」
とぼけようとしたが、武智には効果がなかった。

武智「馬鹿言うなよ。お前随分戻って来なかったじゃねえか」
言うべきかどうか悩んだが、隠すのもおかしいかと思い、言うことにした。

俺「それが近くの神社でさ、地元の女子中学生と知り合って……」
武智「え、お前! ナンパ?ナンパしてたのか?!w」
俺「お前、やめろ! うるせえよ!」
武智の声が配慮の無い声量で、俺は思わず武智の頭をはたいた。

106:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:54:17.78ID:SAP4mO8x.net
あ~ブルーハーツの青空は良い曲だよな
俺もよく口ずさんじまう
おっさんだからかもしれんがw

107:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:57:38.85ID:cajVSWpJ.net
俺「それがさ、その子何か変なんだよな」
首を傾げてそう言うと、武智に「何が?」と聞かれた。

俺「いや、明るい茶髪でさ、そんで煙草吸ってたんだよ」
武智「うわ、ごっついヤンキーじゃねえか」
俺「うん、そうなんだよ。俺もそう思ったんだけど」

武智「何かあったのかよ」
俺「まあねぇ」

108:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/15(木) 23:58:13.61ID:SAP4mO8x.net
武智ww

109:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/16(金) 00:02:39.18ID:tzoYIAqM.net
俺「俺って、ブルーハーツ好きだろ?」
唐突な質問に武智は戸惑ったようだけど、
「まあカラオケでもしょっちゅう歌うもんな」と答えてくれた。

俺はそんな武智に、あの神社で起きたヒロコとの一部始終を伝えた。

武智は疑いの視線で、「ええーそれマジかよww」と笑っていた。

俺「まあいいよ、信じてくれなくても」
なんだか馬鹿にされた気がして、俺はちょっと嫌な気分になった。

武智「ごめんごめん、まあそう怒んなよw」
武智「それにしても、その子は一人でそこにいたんだろ?」

110:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/16(金) 00:04:13.01ID:tzoYIAqM.net
俺「うん、そうだよ」
武智「なんで神社なんかに一人でいるんだろうな?」
言われてみれば確かにそうだけど……
そんなこと、分かるわけがなかった。

俺「とにかく、この話は誰にも言わないでくれよ」
俺「変に噂にされんのも、嫌だからさ」
武智「おう、分かった」

武智はお調子者だったが、約束した事は守ってくれる。
だから俺も信頼して話をしたのだった。

111:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/16(金) 00:15:04.55ID:tzoYIAqM.net
夕食後、そのまま部屋で休憩時間となった。
一日で、一番羽を伸ばせる時間である。

武智「お前! やめろ! ホームランバットは卑怯だろwww」
元気「アイテムを使いこなしてこそ真の強者だからwww」
武智「殺されるぅぅwww」
武智と元気が、大騒ぎしながらスマブラで遊んでいた。

吉谷はその様子を笑いながら、部屋の片隅でベースを弾いていた。

112:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/16(金) 00:16:41.76ID:tzoYIAqM.net
俺「何弾いてんだ」
吉谷「お? ミッシェルだけど」
吉谷はイヤホンを外しながら答えた。

「そっか」と答えて、しばらく吉谷の奏でるベースの音に耳を傾けていた。
そもそも俺がブルーハーツを好きなのも、
ミッシェルやブランキーといった往年のバンドが好きなのも、
全てはこの吉谷の影響だった。

吉谷は軽音部で、好んでそういうミュージシャンの曲を演奏していたのだ。

113:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/16(金) 00:24:05.83ID:tzoYIAqM.net
吉谷の演奏が一息ついたところで、俺は切り出した。
俺「なあ、『終わらない歌』弾いてくれてない?」
吉谷「いいけど、急にどうしたw」

俺「別に、なんとなく聴きたくなっただけ」

そう言うと吉谷は頷いて、「OK」と言って俺にイヤホンの片方を差し出した。
そして曲をかけると、吉谷は無造作にベースを奏で始めた。

114:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/16(金) 00:27:07.69ID:tzoYIAqM.net
吉谷のベースは安定していて、俺の耳にしっかりと届いてくる。
俺はそれを聴きながら、ヒロコの弾いていたギターを思い出した。

演奏が終わって、「うんうん、これだ」と言うと、
吉谷は笑って「何がだよw」と腑に落ちない様子だった。

俺「いや、なんでもない。ちょっと聴いてみたくなったんだよな」
そう言うと吉谷は所在なげに、「ま、いい曲だよな」とだけ言った。

俺は頭の中で何度も「終わらない歌」のメロディーをリピートさせていた。
妙に心に残って、離れなくなっていた。

しばらくするとまた夜の勉強時間となり、粛々と合宿の1日目は終わった。

115:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/16(金) 00:30:40.47ID:tzoYIAqM.net
翌日の2日目、再び勉強の一日が始まったが、
外は見事に晴れていて、気持ちいいほどの夏模様だった。

午後の休憩時間、俺は武智や吉谷、数人の女子とバドミントンをして遊んでいた。
元気のやつは、てこでも外に出ようとはしなかった。

遊びながら、俺はやっぱり昨日の事がどうしても忘れられずにいた。
だらだら考えるのも嫌で、俺は決心してみんなに告げた。

俺「ちょっとジュース買いに行ってくるわ」
吉谷は「おお、気をつけろよー」と至って普通な返事だったが、
武智は妙にニヤついていた。

118:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/16(金) 00:36:34.84ID:hk2/xxau.net
夏に心をえぐられる、、
懐かしいなぁ…

119:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/16(金) 01:06:27.10ID:S9swqxCJ.net
ええなぁ~