107 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:10:28 ID:X0Nc9eZGV
「とりあえず、店出ましょうか」
後輩に会計をまかせて、私は店を出た。
遅れて後輩も出てくる。
夜風が肌を突き刺してくると、不意に不安が頭をもたげた。
「今日はありがとね。私の話、聞いてくれて」
「いや、少しでも先輩の力になれたならよかったですよ」
鼻のおくがツンとした。
アルコールのせいなのか、私は情緒不安定になっているのかもしれない。
「ここんとこさ、私の生活めちゃくちゃでね」
「……先輩」
気づくと視界が滲んで、目の前の後輩の輪郭さえ曖昧になっていた。
111 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:13:42 ID:X0Nc9eZGV
「もう、どうしたらいいのかわかんないよ……」
知らず知らずのうちにあふれてきた涙は、なかなか止まりそうになかった。
そんな私の手を、後輩は両手で包んでくれた。
「大丈夫ですよ、先輩」
後輩の手は暖かかった。
私は彼を見あげた。
後輩はさわやかに私にむかって笑ってみせると、
「先輩、大丈夫ですよ。俺がついてますよ」
その言葉がどういう意味なのかを聞き返そうとする前に、後輩の手が離れた。
彼は照れくさそうに笑っていた。
「じゃあまた今度会いましょう」
「……うん」
後輩とわかれて帰途につく。
私は彼が握ってくれた手に自分の手を重ねた。
彼の体温が逃げないように。
113 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:16:16 ID:bLF9uWWhY
家帰って殺されるオチやん…
114 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:18:19 ID:X0Nc9eZGV
家に帰ると、カホがいつもどおりに私をむかえた。
父が死んでからもその笑顔は相変わらずだった。
「おかえり。今日は遅かったんだね」
「うん、まあね」
「なんだか気分よさそうだね。いいことでもあった?」
「べつに」
「この前、結婚について少し触れたけど、まだ細かいことは話してないでしょ」
そういえば、父が死んでからもうすぐ半年、つまり六ヶ月が経過しようとしていた。
「今度、私のその結婚相手の人に家に来てもらおうと思うの」
「そう、どうぞ勝手に」
115 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:18:52 ID:X0Nc9eZGV
この女のことなど、どうでもよかった。
玄関に腰かけブーツを脱ぐ。
足はすっかりむくんでしまっていたが、気分は悪くはなかった。
「それで結婚相手の人なんだけどね」
ーーって言うの。
「……え?」
私は反射的に背後にいるカホを振り返っていた。
カホの右手の薬指には、指輪が光っていた。
その手は彼女の腹部に置かれていた。
116 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:19:40 ID:X0Nc9eZGV
「今なんて言った?」
「だから、結婚する人の名前なんだけど」
カホがもう一度結婚相手の名前を言う、とても嬉しそうに。
カホが言った結婚相手の名前。
それは、私がさっきまで一緒に飲んでいた後輩のものだった。
117 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:20:24 ID:rBr8STKlD
レミ「」
118 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:20:37 ID:IBwlF9jQp
ひええ…
119 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:20:42 ID:hVUzXWYHd
読めてた
120 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:20:44 ID:Dd9bAvNuI
ソロコンに近いものを感じる
121 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:21:03 ID:hVUzXWYHd
右手じゃなくて左手じゃないか?
122 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:21:06 ID:bLF9uWWhY
予想外wwwwwwww
126 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:23:19 ID:X0Nc9eZGV
ここまで付き合ってくれてありがとう。
こうしてキーボードを打つことでだいぶ冷静になってきた。
だけどもうなにも考えたくない。
考えたくないの。
明日も早いしもう寝るね、おやすみ。
129 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:24:33 ID:q8LWO2Yy1
>>126ぞっとした
とにかく乙
130 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:24:51 ID:gkiNWZhzM
あれ、後輩に父親の死因言ってたか?
131 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:24:54 ID:yxMRmi3Q0
うわぁ…
これ今後どうなっちゃうんだろうな
この先が知りたいが…乙
132 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:24:58 ID:IBwlF9jQp
1乙!
133 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:25:00 ID:rBr8STKlD
家が乗っ取られる
139 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)02:31:00 ID:6qp7ObLLi
殺されオチかと思ったら両親両方年下ファミリーエンドかよ
予想外だった
久々にゾッとできたわ