45 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:43:02 ID:X0Nc9eZGV
あの日からカホは変わった。
「ご飯を食べるときは、いっしょにいただきますをしようね。
『お母さん』より先に食べたらダメだよ」
「洗濯機にものを入れるときは、下着や靴下はべつべつで洗うって言ったでしょ?」
「床にものは置いちゃダメだよ。 この前も『お母さん』言ったよね?」
小言が増えただけのように思えるけど、それは誤解だ。
最初のころは、意地になって私はカホの言葉を無視しつづけた。
普通の人間だったら、あるていど無視されれば
怒ったりあきらめたりするはず。
だけど彼女はちがった。
46 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:43:19 ID:yB5NRpEMO
確かに不気味だ
47 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:47:10 ID:JQ8iUjnY5
はよ
48 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:47:42 ID:X0Nc9eZGV
延々と同じことを言い続けるのだ。
一文一句、完全に同じことを。同じ調子で。
一度、根比べのつもりで彼女の言葉をずっと無視した。
だけど一時間経過しても、彼女は同じ言葉を繰り返しつづけた。
最後には私が根負けして、彼女の言葉にしたがった。
そして今も。
「使わないコンセントはぬいて。前にもそう言ったよね?」
「……」
「使わないコンセントはぬいて。前にもそう言ったよね?」
いつもの笑顔で、同じ言葉を吐きつづけるカホ。
我慢の限界だった。
気づいたときには、私は彼女の言葉をさえぎるように叫んでいた。
49 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:48:50 ID:yB5NRpEMO
これはキツイわぁ
50 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:52:03 ID:X0Nc9eZGV
「なんなのあんたは!?
注意するなら普通に注意すればいいじゃない!?
なんでそんな同じことをずっと言っていられるわけ!?
頭おかしいんじゃないの!?」
みっともなく声は震えていた。カホの唇が止まる。
「私に構う暇があるなら、あの人の面倒を見ればいいでしょ!?」
言葉は吐き出すほど不安に変わって、私にのしかかっていく。
必死でカホをにらむ。
私の叫びなど聞こえていないかのようだった。
カホの笑顔は微塵も崩れることはなかった。
そして。
「使わないコンセントはぬいて。そう言ったよね?」
カホは言った。さっきと寸分変わらないトーンと微笑みで。
51 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:52:04 ID:3SI4oKKea
使わないコンセントいちいち抜くのはめんどいわー
52 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:53:10 ID:3SI4oKKea
待機電力あんまり使わへんこと説明したら。
53 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:54:32 ID:R29y0fSGy
(´・ω・`)・ω・`) キャー
/ つ⊂ \
54 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:55:08 ID:yB5NRpEMO
これは怖ひ
55 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:58:13 ID:X0Nc9eZGV
声にならない声が喉から漏れ出た。
私はリビングを飛び出して自分の部屋へと逃げた。
扉を勢いよく閉めて、鍵をかけた。
布団へと潜りこんで耳を塞ぐ。
「お母さん……!」
私は祈るようにそうつぶやいた。
扉をノックする音が、耳を塞いでいるのにも関わらず聞こえた。
『使わないコンセントは抜いて。そう言ったよね?』
あの女の声が扉越しに私を追い詰める。
目をきつく閉じる。
なのにまぶたの裏では鮮明に、カホが微笑んでいる。
『使わないコンセントは抜いて。そう言ったよね?』
「……はい。ごめんなさい」
私は声をしぼり出した。
扉のむこうでカホが満足そうに笑った気がした。
56 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:58:29 ID:q8LWO2Yy1
ガチでヤバいやつじゃん
57 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:59:15 ID:3SI4oKKea
録画してパパンに見せたらよくね?
59 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)01:00:30 ID:yB5NRpEMO
>>57不仲だから意味ないんじゃね?
60 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)01:01:38 ID:3SI4oKKea
>>59
これだけおかしかったら、パパンも『うわ、メンヘルやったことやで』って気付いて分かれるんじゃね?
62 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)01:02:52 ID:ApS7yphkV
幽霊やお化けの話より怖い
63 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)01:03:30 ID:X0Nc9eZGV
『ユイちゃんは本当はできる子だもんね』カホは言う。
『『お母さん』がどうこう言わなくても、一人でなんでもできるもんね』
はい、と私は反射的に頷く。
『今度は同じことを『お母さん』から注意されちゃダメだよ』
カホが扉からはなれていくのがわかる。
安堵のため息がこぼれた。
それから二ヶ月が経って、カホと父は入籍した。
式はあげなかった。
私は家のことについて考えるのをやめた。
そして。
カホの異常は父にまでおよぶことになる。