女難の相を持って生まれた俺の半生➡︎幼稚園時代、女の子が急に服を脱ぎ始め・・・

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308:1@\(^o^)/: 2016/08/16(火) 16:59:42.03ID:zOnzGAL0.net
夏は、もうすぐ終わる。どんなにやめてくれと願ったとしても。

愛おしさが募る一方で、俺の出国は着実に近づいていた。

出発の1週間と少し前だったか。

週末に俺の激励会をやろう、と奥山が電話をくれた。あいつと話すのも久しぶりだ。
彼女と、奥山と、横山さんと吉田さん。それとせっかくなので当時付き合いのあった
高校の友人何人も呼び、お菓子を持ち寄って俺のうちでの開催に決まった。
友人たちも彼女も、喜んで参加表明してくれた。単純にありがたいと思った。

わいわいと楽しく、宴は無事に進行した。はじめましての人もいたから
少々心配していたが、男気のある奥山が盛り上げ係をかって出てくれた。

前に好きだった女の子2人から、今の彼女とのなれそめを根掘り葉掘り聞かれるという
羞恥プレイ以外は。奥山?助けてくれる訳ないじゃないか。

むしろ、唯一の目撃者としてどれだけ俺が緊張していたか、そのあとどれだけ
俺の付き合いが悪くなったかなどを熱弁した。余計なことをするなお前は。

アヤコはそんな話を聞きながら女子らしくきゃっきゃと笑っていた。
でも、横山さんと吉田さんが中学校の時の4人の話を始めると、
一瞬俺の方をじろっと見て、ぷいっと横を向くしぐさをした。
もちろん本気じゃなかろうが。俺は悪い事もしてないのにオロオロしてしまった。

309:1@\(^o^)/: 2016/08/16(火) 17:01:19.17ID:zOnzGAL0.net
出発の前日。

俺は彼女とと会い、いつものように過ごした。
今考えるとクサくてこっぱずかしいが、俺は彼女に気持ちを伝えるために
シングルCDを一枚プレゼントした。あの細長いヤツな。今の子は知らないか。

MIYA & YAMIの「神様の宝石でできた島」だった。懐かしくて涙が出るぜ。

満月の夜にはきっと見えるだろう
遠く離れてても世界のどこにいても

君と歩き共に生きたかけがえのない時間だけが
今もなお星をたたえかがやいているね
さよならは言わないでいつかまた会えるはずさ
神様の宝石で出来たこの島で

この歌詞が、俺の心境を完全に表現してくれていた。
俺のベッドに並んで一緒に聞いて、二人で一緒に泣いた。
しかし彼女はいつもの時間に帰って行った。名残惜しそうに。
俺は、彼女のいなくなったベッドの上で、さらに泣いた。

311:1@\(^o^)/: 2016/08/16(火) 17:11:31.43ID:zOnzGAL0.net
自分で選んだ道だってのにね。

その日の深夜。彼女からポケベルが入って、俺は是非もなく走って会いに行った。
いつもと違い、彼女は家の外で待っていた。彼女も俺も、泣きはらした
赤い目をしていた。アヤコもあのあと家で泣いたんだろう。

「どうしたの?こんな時間に危ないよ。」と俺。
「どうしてももう一度にイッチに触れたかったの。次は、一年後なんだもん。」と彼女。

俺たちは初めてキスをした場所で、二人がひとつになってしまうのでないかと
思うほど、強くお互いを抱きしめ、また濃厚で長いキスをした。
最後に俺に、彼女が言った言葉だけは、今でも鮮明に思い出せる。

「イッチは、あたしだけのものだからね!」

312:1@\(^o^)/: 2016/08/16(火) 17:12:22.22ID:zOnzGAL0.net
出発日は平日だったから、彼女は見送りに来れなかったんだ。
奥山も仕事があったし、ほかの同級生も学校があった。
母親だけが、泣きながら俺を見送ってくれた。

一年分の荷物の入ったスーツケースと段ボール箱をひとつ抱え、
俺はその日、この国から脱出した。一緒の国にいく、ほんの少数の仲間たちと共に。
眼下に広がる「日本」という故郷を見下ろしながら、俺は心のなかで
すぐ帰ってくるさ。何も変わらないさ。そう言い聞かせるようにつぶやいた。

留学期間のことを書き始めると、また長くなるし
本筋と離れてしまうので思い出深いエピソードをいくつかかいつまんで書く。
ひょっとしたらこの時のこともいつかスレ立てするかもしれない。
その時はまた、みんな読んでくれよ。

313:1@\(^o^)/: 2016/08/16(火) 17:15:20.76ID:zOnzGAL0.net
向こうに行ってもアヤコとは週1ペースで文通をした。エアメールな。
べらぼうに高かったが、たまに国際通話をすることもあった。
その声は遠くてその上音がズレて話しにくかったが、変わらないように聞こえ安心した。

数分だけの会話が終わるたびに、「待ってるから」と彼女は言ってくれた。
今みたいに、メールとかSNSでタダでいつでも話せるようにはいかなかったんだよ。

しかも発展途上国だったから、すべての手紙が届くわけではなかった。
大体3分の1程度は届かなかったと思う。届いたとしても航空便で
最低でも1週間かかった。送った順番が前後することも普通にあった。

奥山から一度だけ小包が届いた。日本で流行っている音楽をダビングした
カセットテープと、男らしくてあいつらしい、短い手紙を添えて。

手紙には、彼の親父さんが亡くなったことが簡単に書かれていた。
アル中をこじらしての、肝臓がんだったようだ。

そんな大変な時に、こいつは俺の為に日本の「今」を届けてくれたんだ。
現在と違って、曲をコピーするにはその曲の長さだけ時間がかかる。
あいつの人間の大きさに、再度俺は尊敬の念を覚えた。
手紙の最後は、葬式には誰も来なかったよ。とだけ書かれていた。

俺は子供の頃永山さんを泣かせた時と、中学生の時吉田さんを助けたときだけに見せた
あの奥山の悲しそうな顔を思い出して少し胸がくるしくなった。
親父さんには申し訳ないが、あいつもこれでやっと自由になれたのだろうかと
半分はなぜか、ほっとしたような感覚が残った。

314:1@\(^o^)/: 2016/08/16(火) 17:16:48.03ID:zOnzGAL0.net
少し話を留学に戻そう。

俺が行った国は、多民族国家だ。
肌の色も、髪の毛の色も、目の色も皆違う。まさに人種の坩堝だ。
その国の人たちにとっては「普通の容貌」というものがなかった。
ひとりひとり違う。それが当たり前。多様性を受け入れなければ成立しない世界。

あのゴリラがこだわっていた「ふつう」とは一体なんだったのだろうか?
俺はこの国に来て、ひとつの回答を得た。ただのバカバカしい思い込みだったんだと。

俺は今でもそういう事が本当にバカらしく思える。
髪や肌の色がすべてではない。大事なのは一人一人の人間の中身だと俺は信じる。
ネットで色々見ていると、いろんなことを言う人がいる。
在日朝鮮人の方や、障害がある人や、LGBTの人たちの事を悪く言うやつもいる。

もちろん発言の自由はあるが、そういう書き込みを見ると、
俺には彼らがいかに狭い世界でものを考えているのかがよくわかる。
もちろん、俺の意見が絶対に正しいなんて思わないよ。悪く思わないでな。
ただ、もっと心を開いてほかの世界を見てきてほしい、と切に願うだけだ。

どこにいっても旨いものはあるし、まずいものもある。
いい奴も嫌な奴もどこにでもいる。ただそれだけのことなんだ。
俺の行った国は、差別は激しかったし、暴力や貧困も目に付く所に転がっていた。
そういう事もこの目で確かめての俺なりのあくまで個人的な意見だ。

ちょっと話がずれたな。ごめん。

316:1@\(^o^)/: 2016/08/16(火) 17:19:20.84ID:zOnzGAL0.net
その国で俺は初めての言語とセットで、お酒とたばこを覚えた。
そういった物への年齢制限がその国にはなかったんだ。教師と校内で飲んだこともある。
もちろんちょっとしたパーティの様な集まりの時に、たしなむ程度だよ。
これは、アヤコには内緒にしていた。たぶんすっごく怒られるから。

俺は自由を満喫し、毎日のよう学校が終わると旧市街に通った。
現地の複雑でいい加減なローカルバスも、言葉と共に自由に使えるようになっていった。
市場で、様々な人種の生活の匂いを嗅ぐことがとても楽しく、飽きることは無かった。
もちろん現地でできた友人たちともめいっぱい遊んだ。
ディスコで踊る事やビリヤードもあいつらに教えてもらったな。そういえば。

俺の属していた留学団体は勉強だけではなく色々な娯楽も提供してくれた。
その国にある大きな島にいったり、高い山の途中まで遠足に行ったり。
内陸部に広がる、ジャングルに連れて行ってくれたり。
三か月が過ぎる頃にはホームシックよりも楽しさの方が勝っていた。

初めての国境も、この国で目撃した。
ただ橋の真ん中に、消えかかった白線と橋の両側にそれぞれの国旗があるだけ。
こんなものを奪い合って、人は殺しあうのか、と俺は正直あきれた事を覚えている。

その街には、もう落ち着いてはいたが昔国境紛争があってその時に埋められた
地雷のせいで手足の無い人がたくさんいたから。それでも皆逞しく懸命に生きていた。
彼らの強さと、底抜けの明るさと、生きるエネルギーに心から敬意を表したい。


318:1@\(^o^)/: 2016/08/16(火) 17:23:29.40ID:zOnzGAL0.net
楽しい時間はすぐに終わる。少しだけ、アヤコとの文通のペースも落ちた。
いろんな国の人間と、色んなことを話しているうちに
こいつらは俺と何も変わりはしないという感覚だけが強く残った。
多少の民族的、文化的な差があったとしてもだ。

腹が減れば飯を食うし、恋をすれば悶々とする。
どの子が一番かわいいか?なんていう話題だってまったく一緒だ。言語が違うだけ。
俺はケツがいいだの、いや俺はやっぱり乳だ。だの。
年頃の男の子というのはどこに行っても似たようなものなんだ。実際の所。

帰国の日は、あっという間にやってきた。

319:1@\(^o^)/: 2016/08/16(火) 17:24:54.99ID:zOnzGAL0.net
飛行機が出るときにその国を象徴するような山の山頂が雲の切れ間から見えた。
俺は不覚にも色々な思い出が込み上げてきて、思わず泣いてしまった。
隣に座っていた、アメリカ人で腕にタトゥの入っているでかい白人の男の子が
黙って優しく、俺の背中を撫でてくれた。アヤコと離れてから実に1年ぶりの涙だった。

帰ってきたとき、日本はちょうど夏休みに入っていた。
俺にとっては1年以上の長い長い、夢のような夏休みだった。
色んな物を見て、色んなものに触れて。いろんなことを考えた一年だった。
待っていてくれたアヤコに恥じない、一回り大きくなった自分を認識していた。

彼女は手紙で、事前に無事志望校に合格できたと報告してきてくれていた。
俺が帰国日を伝えるために電話したとき、彼女は泣いて喜んでくれた。
それが、俺はすごくうれしかった。遠く離れていても、彼女はそこにいる。
さよならを言わないで離れて、正解だった。と俺は実感した。

320:1@\(^o^)/: 2016/08/16(火) 17:27:46.25ID:zOnzGAL0.net
わざわざ俺に見せる為だけに、彼女は高校の制服で空港まで出迎えに来てくれた。
1年ぶりの彼女はすこしだけ背が伸び、さらに大人っぽくきれいになっていた。
俺は彼女の制服姿を褒めちぎり、彼女は俺の成長した姿を褒めてくれた。

空港での、人目をはばからないキスとハグ。もちろん母親にも見られたよ。
おかんは咎めもせず、見なかったことにしてくれているようだった。

今日はまぁ片づけもあるからとその日は家の車で彼女を送って解散した。
その日の夕食はやはり俺の好物の手巻き寿司だ。
このときはもりもりと食った。粘り気のあるゴハンなんて久しぶりだ。生の魚もノリも。
遺伝子が知っているおしょうゆの味。それだけで食は信じられないほど進んだ。

いつの間にか母から伝わったのか、お姉ちゃん二人には死ぬほどイジられた。

「まるでドラマみたいだったんだって?」パパラッチ長女。
「若いっていいなぁ。いいですなぁ。甘酸っぱいなぁ。」おっさん次女。

…やっぱりおかんは全てを克明にかつ、盛大に盛った上で喋ってやがった。
俺はこれからアヤコとの幸せな時間がいつまでも続く…と思っていた。

321:1@\(^o^)/: 2016/08/16(火) 17:29:15.86ID:zOnzGAL0.net
彼女とのズレは、ひと月もしないうちに現れた。
何度か彼女を抱くうちに、俺は違和感を感じていた。
セ●クスの最中、目を合わせると、視線をそらすことが多くなっていたのだ。

逆カルチャーショックって言えばわかるだろうか?
日本自体に前よりも違和感を感じていた俺は最初あるいはそのせいかと思っていた。
しかし何度抱いてもキスをしても、それとは異質な違和感を俺は感じていた。

ある日、俺は彼女に唐突に訊いた。

「何か、悩みでもあるの?アヤコなんかヘンだよ。」

しばらくじっと俺の目を見つめていた彼女は諦めたのか、突然わっと泣き出した。

「ごめん…ごめん…寂しかったの…あたし…ごめんなさい…」

それを聞いて、俺はすぐに察した。
落ち着かせてから詳しく聞くと、なんてことだ。
信じられない告白が、初めての俺の「彼女」の口から明かされる。