ひたすら謝る両親。きっと出来た人格者なのだろうと思う反面、これは娘に申し訳なくて謝ってるのか
世間体に反して恥ずべきことをしたのに謝ってるのか、はたまた浪人の息子をかばうためにオーバーアクションしてるのかと色々よぎったが、どうでもいいことなのでやめた。
しばらくして本当の親父さんが帰ってきた。少し酔っ払っていたが、家帰るとあまりの大人数なことに面食らってきょとんとしていたのを覚えている。
「な、なんだあこれは…」
すると浪人両親はまた土下座をはじめた
ことが収まり、冷静になって話がはじまった。
「ずっと○○さんのことが好きだった。でも俺は浪人してて周りの友達の大学生が羨ましくて。だから俺も○○さんと付き合って幸せな日々を送りたかった。でもある日ゴム持ってなくて…それでも大丈夫かと思って…」
本当に好きかはさておき、あまりに身勝手な言い訳に関係ない自分も煮えくり返っていた。そして行為の一部始終を申し訳さそうにペラペラ話すのを黙って聞く父親。
この時の心中は計り知れないものがあるだろう。
しばらくしてまた謝ろうとする両親に「やめてくれ」と言った親父さんは
「すまない。どうしても私は君を許すことができない」といった
「君はまだ子供だからわからないかもしれんが、私はこの子が小学生のときに妻を亡くしてね。家事や家のことを何もしなかった私は本当に何も出来なかった。
周りの人に恥を忍んで色々聞いたよ。掃除の仕方、料理、洗濯。それまで全くしなかったことが本当に恥ずかしかった。
そしてなによりこの子には不自由なく学校や生活を送らせたかったんだ。とても頑張ったよ。それでも稼ぎは少なかったけどね」
ははは、と空笑いする親父さんに号泣する娘。込み上げるものがなにかわからないが、俺も泣いていた。
「でも娘はグレずに頑張って勉強してくれた。友達にも恵まれてしっかり育ってくれた。自慢の娘なんだ。それは今でも変わらない。私は命をかえても娘を愛してるんだ」
全員涙が止まらなかった
うつむく浪人君、両親。すすり泣くのは娘だけ。俺は何とも言えない父親の凄みにただ圧倒されていた。
「出来るなら私は君を殺したい。法が許すのなら、いやふっとした勢いで君を殺すことなんて簡単だろう。理解できないか?たかが妊娠だろ、おろせばいいだけだろ?と思ってるだろ。違うんだ私はそれだけの覚悟をもって娘を育てたんだ。だって父親なんだから」
そういうと親父さんは娘の頭をぽんぽんと撫でた
「なんでだろうな…昨日と同じ娘なのに
まるで別人に見えているのは…」
一筋の涙が伝ったとき、浪人くんに
「立て」といった