「実はね、死んだお父さんが起こした事故で、8人もの人にけがをさせ迷惑をかけてしまったんだけど……
保険などでも支払いできなかった分を、毎月5万円ずつ払い続けていたの」
「うん、知っていたよ」
女将と主人は身動きしないで、じっと聞いている。
「支払いは年明けの3月までになっていたけど、実は今日、ぜんぶ支払いを済ますことができたの」
「えっ! ほんとう、お母さん!」
「ええ、ほんとうよ。
お兄ちゃんは新聞配達をしてがんばってくれてるし、
淳ちゃんがお買い物や夕飯のしたくを毎日してくれたおかげで、お母さん安心して働くことができたの。
よくがんばったからって、会社から特別手当をいただいたの。
それで支払いをぜんぶ終わらすことができたの」
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