「あのー……かけそば……2人前なのですが……よろしいでしょうか」
「えっ……どうぞどうぞ。さぁこちらへ」と2番テーブルへ案内しながら、
そこにあった「予約席」の札を何気なく隠し、カウンターに向かって「かけ2丁!」
それを受けて「あいよっ! かけ2丁!」とこたえた主人は、玉そば3個を湯の中にほうり込んだ。
2杯のかけそばを互いに食べあう母子3人の明るい笑い声が聞こえ、話も弾んでいるのがわかる。
カウンターの中で思わず目と目を見交わしてほほ笑む女将と、
例の仏頂面のまま「うん、うん」とうなずく主人である。
「お兄ちゃん、淳ちゃん……今日は2人に、お母さんからお礼が言いたいの」
「……お礼って……どうしたの」
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