立派な仕事・・・
誰にでも出来る仕事じゃないことをしてくれる人がいるから、
君たちは何不自由なく便利に使えたり利用できるんだ。
いいかい?
『ゴミ』なんて言葉を使うんじゃない。
掃除をする方が、掃除をして給与をもらうだろ?
これは、その仕事や人に対しての対価=ありがとう
という報酬なんだよ。
そこにお金という対価が発生しているという事は、
必要とされているからなんだ。
ゴミじゃないんだよ。
でも、きっと雇う側も仕事を与える側も、
君たちの様な価値観の人間には何も渡さないと思うが、どう思う?」
そう言い、ふと大学生が首から下げている名札を見てさらに笑みを浮かべこう言います。
「ふむ。
面接か…楽しみだね。
そのロゴは私の会社のシンボルだ。
後で、面接室で続きを話そう。」
一瞬この意味が私には理解出来ませんでした。
しかし、大学生たちはすぐにこの意味を悟った様子。
どうやら、このおじさんは彼たちがこの後面接を受ける会社の社長だったのです。
私も、このビルの清掃をしていて何度か見かけた事はある顔でしたが、
まさか会社の社長だったとは知りませんでした。
冒頭でも述べましたが、私はこの仕事を与えられているだけで感謝しています。
与えられている事、任せてもらえる喜びを知っているから…。
世の中に仕事や与えられる責務は数えきれないほど種類があるでしょう。
しかし、それをバカにしたり差別したり比べる事は決して良くはない事だと思います。
その職種、その責務には全てに『事情』があり、
『原因』があり、『目的』があるという事を忘れてはいけません。
この翌日から、トイレで用を足しながら大学生へ説教をした
『少しワイルドなおじさん』は、私を見る度に微笑んでくれます。
そして必ず一言声を掛けてくれます。
「いつもご苦労様。」
ただ、その二人の大学生をこのビルで見かける事は、あれ以来一度もありません。