毎晩酒とご馳走を運んでくれた施設の職員さんに
「いったい何の研修やってるんですか?」と、
心底不思議そうな目で聞かれたのは忘れられない。
こうしてこの風変わりな研修は続いた。
建物に閉じ込められ、延々ポンチ絵、討論、トラウマ発掘、
泣き出す参加者、夜は無理して酒と揚げ物、それの繰り返しだった。
で、三日目ぐらいに最悪の事態が起きた。
(ここから先はフェイク強化で進めます)
ついに家族を亡くしたトラウマを掘り起こされる参加者が出た。
その参加者は、ブルブル震えながら涙ボロボロ流して
「おかあさんおとうさん…」と呟いている。
戦わされていた相手は真っ青になって
「ごめんなさいごめんなさい」を繰り返している。
誰も何も言えなかった。
いや、昨日今日知り合った赤の他人のこんな話聞かされて、我々にいったいどうしろと。
するとオークがようやく動いた。
やっと救急車呼ぶのかと思いきや、
オークはしたり顔でなんか語り出した。
「そうか……おまえの目は他の者と違う…
何か大きな憂いを秘めとると思っとったが、そんな過去があったんか…」
マジで何言ってるのか分からなかった。
お前はこんなことまで研修の材料にするつもりか。
こんな禁断の領域まで、自分の見る目を称える材料にするつもりか。
いやまじで、子供の頃「やっていいことと悪いことがある」
って教わらなかったのか?
皆の困惑をよそに、オークはまた泣いてる参加者に
いつものようにしたり顔で人生の訓戒垂れ始めた。
「こいつはきちんと自分の過去と向かい合った」とか何とか言ってるが、まったく理解できん。
その後オークは何を思ったか、いきなり全員に目を瞑れと言って来た。
「この中で、家族を亡くした経験のある者、挙手しろ」
うわぁそんなのまで材料にするんか。
さらにオークは「今挙手した者のご家族はきっと苦労なさってきただろうが…」
とか何とか語り始めた。
とりあえず自分がこの参加者の先祖なら、
今現在子孫の心を踏みにじっているてめぇを許さんわ。
その後も、しまでは行かなくても、
不幸と戦う身内のことを研修のネタにされる者が出た。
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