おっさんズの前に一列に並ばせられ、順番に握手させられた。
それだけなんだけど、なんか不気味だった。
突然の土下座洗礼で参加者の精神が磨耗した頃、
ようやく研修に入った。
研修といっても、業務に関係する事はほとんどしなかった。
させられたのは「ポンチ絵」の制作。
まず、おのおの制限時間内にテーマに沿った「ポンチ絵」を描く。
その後作品を発表、そして皆でそれについて討論する。
テーマは「今までお世話になった人のこと」
「今まで生きてきてどうのこうの」など、
参加者の人生を振り返るものばかりだった。
そういうものを描き、他人のそれに突っ込みを入れていくうちに、妙な事が起きだした。
本人が忘れていた、あえて書かなかったトラウマなどが、
討論によってほじくり出されていく。
恐らくコレが主催者側の目的であり、
心のモヤモヤを吐き出して晴れて…という意図があったのだろうと推測される。
でもあまりにやり方が悪かった。
社員達は討論の進め方の指導などせず、
いきなり何も知らない参加者にやらせた。
自分達はただ後ろでふんぞり返って見て、時々怒号を飛ばすだけだ。
しかも「討論には必ず勝て。負けたらそれは業務が出来なかったという事だ」
まで言うので、皆とにかく必死にやった。
でもできるわけがない。
討論なんてわからないからとにかく口喧嘩のやり方で対抗するしかない。
しかし、そうやって手探りで口喧嘩をしたり、上手く討論できなかったら
「屁理屈ばかりこねやがって!!」「嘘をつくな!!」
「お前今までどうせ人に甘えきって生きてきたんだろう!」
と、集団の前で罵倒される。
昨日まで「仲良くなれそうだね~」とか言ってた女子達が、
今やお互いの人生のトラウマを穿り返して泣きながら睨み合ってる構図は、かなりの地獄絵図だった。
なんせ相手の意見に上手く突っ込めないと怒られるから、突っ込む方も必死だ。
だいたい、昨日今日会ったばかり他人の心の奥の深い部分に切り込むなんて出来るわけない。
だがやらないと怒られる。研修は荒れに荒れた。
そして社員の思惑通り、トラウマを抉り出されて涙する者が出てくる。
するとすかさずオークの出番だ。
オークはしたり顔で涙する参加者を慰め、肩を抱く役割だ。
こんな白々しい現象が何度も繰り返された。
外見が理由で虐められた過去を思い出して泣き出した女子に
「こんな可愛い子をいじめるとは…」と慰めるオークを見た
時は、自分がもしこの子の身内ならオークをぶっ飛ばしてるだろうなと思った。
ちなみに制限時間内にポンチ絵ができなかった際は
「納期を破ったも同義」なので、やっぱり怒られる。
そして「誠意を見せろ!」というありがたい怒号が飛ぶ。
少なくとも自分は人生これ以降こんなヤクザな台詞をリアルで聞いた事ない。
で、ここで言う誠意とは何かといえば、大声のことだそう。
いかに大声で「申し訳ありません!!」と言えるかが「誠意」らしい。
更に社員側は、研修期間中毎晩宴会を催した。
つまり一日四食だった。
酒とご馳走で研修生をもてなすなんて、ああ我が社はなんて優しいんだ、
至れり尽くせりだ(マジで言ってた)。
得たものは、愛想笑いと酒の注ぎ方と、胃痛。プライスレス。
続きは次のページから!!