プレゼントや花束を毎回持ってきてくれる田所さんは本当に良い人だと思ったけど
だんだん、もう、そんなに尽くさなくていいよ…と思うようになった。
田所さんに「欲しいものある?」と聞かれ、あまり私は物欲がなくて
「私は田所さんと話せるだけで嬉しいよ~」とかわしていた。
田所さんは「僕も優子ちゃんと話せて幸せ。」と嬉しそうにしていた。
それでも毎回何かしら物を持ってきた。
私がお腹を空かせているだろうとたこ焼きやドーナツやお寿司、ほかにもアニメグッズ、
私の好きなアーティストのDVDやら色々と持ってきていた。
家には田所さんから頂いた物で山になり、あまり自分の部屋に物がありすぎるのが嫌だったので
女の子にあげたりオークションで売ったりして減らしていった。
Oh…no…
キャバクラは女の子の入れ替わりがすごく激しくて
お店の女の子で、私が古株のほうになっていた。
ライターもつけれなくまったく話せなかった私がベテランになり
新人の女の子に仕事を教えてあげる立場になった。
仕事を教えてあげる他にも、女の子の悩みを聞いてあげたりと
お母さんっぽい立場になっていた。
売上は下がってもお店の中では1位はキープしていた。
女の子の中には私のことをライバル視する子もいて無理して対抗する子もいたけど
精神的につぶれて辞めていく子が多かった。
気づけば女の子ともスタッフとも仲が良くなって
お客さんがいない時はみんなでトランプしたり、DSで通信対戦したりして
毎日をほのぼの過ごしていた。
指名につくこと多かったが(ほぼ田所さんの席)、ある日久しぶりに新規のお客さんについた。
20代前半で水泳選手の北島康介にそっくりな男性だった。
「初めまして~優子です。お客さん!わ、若い!若いですね~!」
「……はい。」
「(物静かな人だな…)お酒とか飲むんですか~?」
「………たまに。ワインとか」
「へ、へぇ~♪」
ものすごく会話が弾まなくて、無言状態が続いた。
あ、もうこの人はこのお店こないだろうな…と思いつつ頑張ってしゃべり
時間が過ぎボーイが延長するかどうか聞きにきた。
「延長しますか?」
「……….します。」
「(えっ!)延長でいいの~?」
「……….うん」
「(まじかよコイツ..)うそ!本当に~!ありがとう♪」
「………閉店までお願いします。」
「え!!!!ホントに?!」
閉店まで残り4時間もあった。自分にとって訳がわからないよ!という状態だった。
ほぼ無言で高い金を払う。何が楽しくて延長するのかまったく理解ができなかった。
4時間という長い時間で会話したのはトータル30分ぐらいだったと思う。
「どんな仕事されてるんですか?」
「……….自衛隊」
「え!!すごい~♪良い体格してますもんね♪」
「……………..ありがとう」
「あはは…ねぇねぇお名前なんて呼んだら良いですか~?」
「………….山本でいいよ」
「山本さん♪優子はねぇ~優子でいいよ♪」
「………….ユウコサン。」
「うん(^v^)」
「……….」
「・・・・」
ほかの客席はお酒も入りかなり盛り上がっていたけれど
私と自衛隊の山本さんの席はお通夜かよって突っ込みたいぐらい静かだった。
>>96
まったく喋らなくて最初はキツかった。慣れると黙ってるだけで良いから楽だったけど。
>>97
いるよね。もう何喋れば良いかチンチンカンプンになるよね。
>>98
田所さんはまだ喋ってくれるけど、山本さんは本当にいつも無言だった。
山本さんはお酒は飲む方で、来店したら私が席についたと同時に
スタッフがモエシャンドンを持ってきてくれた。
「今日もモエ入れてくれたの?!ありがとー♪」
「…………うん」
グラスにモエを入れて乾杯してほぼ喋らずにいつも無言だった。
喋る時はほぼ私から話しかける形だったけれど、山本さんは私以上に口下手で
会話をシャットアウトさせるのが特技か?と思うほど会話がいつも止まった。
「私ね、長澤まさみのマネできるよ!」
「………….前から似てると思ってた。」
「ほんとに?!(カルピスを持って)体にピース☆」
「……………」
「はは…(温度差がつらい…)」
得意技の体にピース☆に反応することなく、面白くなかったかなと落ち込みながら帰ってる時に
メールで「長澤まさみのマネ似てたよ。」と送ってきてくれた。
田所さんは毎日毎日メールを送ってきてくれた。
だんだん私に会社の鬱憤も話すようになって、ウンウンと聞いてあげるようになった。
お店にはメールで「○月○日○時に優子さん指名でお願いします。」と予約し
1分でも遅れそうな時はお店に必ず電話をいれるようになった。
スタッフの間でも「お客で一番真面目な人って田所さんッスよね~」と好感度を上げていた。
私は田所さんに対してはお客さんとしか見れなくて恋愛感情はまったく無かった。
山本さんは自衛隊でいろんな地域に行く事が多く月に5回ほど来店してくれた。
予約せずにフラっとくる人で、たまに「店行くよ」と連絡をくれた。
ある日、いつも通りお通夜状態で山本さんといるときに田所さんがお店に予約時間通りにやってきた。
山本さんは延長するつもりだったけど、田所さんが来たので延長出来ず
山本さんを「また話そうね~♪」と見送った。
その一部始終を田所さんが見ていた。
「優子ちゃん、さっきのお客さんは…?」
「あぁよく来てくれる人だよ~」
田所さんは「え?」といった顔をしながら私の顔を見てきた。
「なんか、すごく楽しそうだった…。」
「え~?そう?ただのお客さんだよ♪」
「お客さん?…僕のこともそんな風に見てるの?」
「えー!思ってないよ♪田所さんは特別に決まってるじゃん♪」
「本当?!僕も優子ちゃんのことは特別で大事だと思ってるからね」
田所さんはたまに、ほかのお客さんに嫉妬したりした。
ほかのお客さんと話しているところを見られると必ず
「どんな話していたの?あの人はどんな人?」と聞いてきた。
私がほかの男性にコロっといきそうで不安でいっぱいだったんだと思う。
私のお客さんの中には、中年の方もいた。
車のメーカーに勤めていて、バツ1の中島さんがいた。
すごく人柄が良さそうで田所さんと山本さんとは違って面と向かって猛烈にアタックしてくる人だった。
中島さんはよく会社の人を連れて来店していた。
滞在時間は1時間ほどで、ノリの良い中島さんはオヤジギャグをよくかましていた。
私はオヤジギャグがすごく好きで中島さんはおじさんとして好きだった。
中島さんに「2人で沖縄行こうや♪」と誘われ、悪い人ではなかったので2人で沖縄に行った。
真冬に行ったんだけど、沖縄はすっごく暖かくて海も綺麗で
ヤドカリを捕まえたりして子供のように2人でキャッキャッはしゃいでいた。
中島さんは50代だったので、親子みたいに見られた。悪く言えば援助交際っぽくも見えたかな。
夜はホテルの部屋も別々で中島さんにいやらしい事はされずに気持ち良く眠りにつけた。