彼女は着たままだった俺の喪服掴んで。それでもまだ笑顔作ってて。
「あは。やっぱ、おばーちゃんの前じゃ、泣いちゃ駄目かなって。」
ぼろぼろ、涙こぼして。
「お、お、おにーちゃんなら、ちょっとなら、許して、くれる、かな、って。」
やっと、声あげて泣いた。泣いてくれた。これで俺も泣いていいと思った。
結局俺のした事は、一緒に泣いた事。それだけ。情けなかった。
あの時以来、「お兄ちゃん」と呼ばれるようになった。
それまでは名字にさん付け。それがいきなり。
兄弟いないから呼ばれたこと無いし、相手は女の子だしで、気恥ずかしくて。
やめてと言った事もあったけど「ダメですか?」と言われると、ダメとは言えなくて。
お婆さんに言わせると「甘えたかろうから」と、そう言う事らしかった。
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