「紅茶でいい?」
電気ケトルに水を注ぎながら、こっちを振り返らずに先生が言う。
カーディガンの背中に垂れた長い黒髪に見惚れてしまった。
もともと魅力的な人ではあったが、さて、これほどまでだったろうか。
「おかまいなく」
「そういうわけにもいかないでしょ」
そうか、と僕はあることに思い当たる。
学校では先生はいつも、髪を結っていたのだ。
アップにまとめていたり、肩ごしに前に垂らしていたりと髪型は様々だったが、こんな風に髪を降ろしているのは初めて見る。
その様子は、こっちが恥ずかしくなるくらいに綺麗だった。
3: 名も無き被検体774号+ 2014/03/12(水) 06:56:22.02 ID:zSMs1Lti0
「誰かに言われて来たの?」
言い方こそ柔らかいが、表情は硬い。当然だと思う。
僕は首を横に振って応えた。
「そうだね。先生たちが、生徒にこんなことさせるわけないもんね」
僕の目の前にカップを置いて、先生は向かいの席に腰を降ろす。
「どうして、うちまで来たの? どうやって、この住所を調べたの?」
身がこわばるのを感じた。どうやって、というのは一番答えにくい質問だ。
もちろん、『職員室で他の先生方から聞く』という方法を取ったわけじゃない。
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