15: 名も無き被検体774号+ 2014/03/12(水) 07:15:44.50 ID:zSMs1Lti0
土曜日の午後は図書館にいた。
駅から続くペデストリアンデッキに面している自動ドアが、人を吐き出しては、その倍ほどの人間を吸い込んでいく。
壁際に設置された長椅子もよそよそしい色をしたテーブルも、人で埋め尽くされていた。市立の図書館に来る用事などほとんどないものだから、本そのものどころか、目当ての棚を探すことにすら多少の苦心をした。
社会科見学に来た小学生のようにあちこち歩き回りながら、上下フロアのほとんどを踏破したのちようやく、僕は人文社会学関連の資料棚を見つけることができた。「いったい何に目覚めたってんだ?」学ランの詰襟から亀のように首を伸ばして、ユウキが手元を覗き込んでくる。
駅から続くペデストリアンデッキに面している自動ドアが、人を吐き出しては、その倍ほどの人間を吸い込んでいく。
壁際に設置された長椅子もよそよそしい色をしたテーブルも、人で埋め尽くされていた。市立の図書館に来る用事などほとんどないものだから、本そのものどころか、目当ての棚を探すことにすら多少の苦心をした。
社会科見学に来た小学生のようにあちこち歩き回りながら、上下フロアのほとんどを踏破したのちようやく、僕は人文社会学関連の資料棚を見つけることができた。「いったい何に目覚めたってんだ?」学ランの詰襟から亀のように首を伸ばして、ユウキが手元を覗き込んでくる。
「別に。なんか、面白そうだなあと思って」
「『不登校児に見る日本学校史』がか?」
「いや、そういう特定の本がってわけじゃなくて」
特に僕の返答になにかを期待していたわけではないらしく、ユウキはかがめていた身体を起こして本棚に挟まれた通路を歩き始める。
彼の背中に向かって声をかける。
「ユウキは結構来るの? 図書館とか」
「いいや。全然だ」
けどな、と前置きしてから
「そういう小難しい本ばっかり読んでたやついたなあ、と思ってさ。前の学校での話だけど」
思えば僕は、彼の過去について全然知らない。
親友が聞いてあきれるな、と独りごちた。
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