202:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:11:29.272ID:8y3a+Cnxa.net
女『あ、そういえばね、前メアドくれたって言ってた人いるじゃん』
男「お、おう」
女『やっぱりメールしなかったの』
男「……」ホッ
男「いやいや、なんでホッとするんだよ、おれ」
女『あの人ねえ、他にもいっぱいメアド渡してたんだって』
男「そっか」ホッ
男「悪い男にひっからなくって、よかった」
男「っていう安心だ、うん、おれおかしくないぞ」
203:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:12:57.401ID:8y3a+Cnxa.net
【20××.12.31 23:55】
女『こんばんわー』
女『今年も残すところあと僅かですね!!』
男「おう、今日だけなんか時間が違うな」
女『今日だけはね、年越しをあなたとしたいなって思って』
女『いつもちょうどの時間に録音してたんだけど、今日だけ特別!!』
男「いやあ、今日は朝からヒマでヒマでね」
女『年越すぞー』
男「おおー」
204:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:15:01.061ID:8y3a+Cnxa.net
……
女『あと5秒!!』
女『せーのお』
男「ハッピーニューイヤー!!」
女『新年明けましておめでとうございます!!』
男「ハモらなかった……」
女『いやあ、今年もどうぞよろしくお願いします!!』
男「はあい、こちらこそ」
女『でも一緒に新年を迎えてるってのに、年号が違う、干支が違うって変な気分』
男「んー」
205:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:16:18.930ID:8y3a+Cnxa.net
……
女『ズバリ!! 今年の目標は!!』
男「おお」
女『ああ、時間がない』
女『今年の目標は、CMの後で!!』
ガチャリ
男「……」
男「引っ張るねえ」
男「1月1日のテープは、と」
カチャカチャ
男「昼じゃねえか!!」
206:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:17:49.100ID:8y3a+Cnxa.net
【20××.1.1 12:00】
女『おはよう!!』
男「寝てたのか」
女『朝寝は最高ですね!!』
女『しかもコタツで!!』
男「ちくしょう、羨ましい」
女『今からおせちを食べるよ』
男「おお、作ったのか」
女『作ったのはちょっとだけ』
女『ほとんどお惣菜です』
男「なんだ、そっか」
209:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:20:11.353ID:8y3a+Cnxa.net
女『でも年末に買いこんでおいて正解だったわ』
女『しばらく外出しないだろうし』
男「まあ閉まってるしな、店も」
女『太っちゃうう』
男「運動しなさい」
男「って、おれも偉そうに言えないけども」
女『でもね、正月くらいはね、いいよね』
女『さあさあ、熱燗もいっちゃうよ~』
男「おおおい、大丈夫かよ」
女『うひょ~』
男「早いよ、酔うのが」
210:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:21:44.890ID:8y3a+Cnxa.net
女『という訳で、今年の目標は、太らず!! 楽しく!! おいしく!!』
男「地味に語呂が悪いぞ」
女『お酒ももう少し飲めるようになりたいし』
男「うんうん」
女『頭痛も最近やわらいできてるみたいで調子いいし』
男「……うんうん」
女『料理もうまくなりたいし!!』
男「そこ重要だね」
女『いい一年にするぞ!!』
男「頑張れよ」
212:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:23:07.783ID:8y3a+Cnxa.net
【20××.1.10 14:00】
女『今日、町の方で成人式やってたよ』
男「ああ、ニュースでも、どこもかしこも成人式だな」
女『ああ、懐かしいなあ』
男「ほんの数年前だろ」
女『あなたは成人式、行った?』
男「ああ、退屈だった記憶しかないけどな」
女『私ね、成人式行けなかったんだあ』
男「どうして」
213:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:24:36.111ID:8y3a+Cnxa.net
女『インフルエンザにかかっちゃってね』
男「ああ~」
女『昔から体は弱い方だったからなあ』
女『着物も予約してたのに、あ~あって感じ』
男「そりゃあ残念だったなあ」
男「やっぱ女の子にとっては大イベントなんだろうか」
女『大きくなって、初めて泣いちゃった』
男「ん……」
男「残念だったな」
女『結婚式では絶対キレイな着物着るんだから!!』
男「おお、着物派か」
女『ドレスも可!!』
男「どっちでもいいのか」
216:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:26:15.971ID:8y3a+Cnxa.net
【20××.2.11 13:00】
女『先輩にバレンタインチョコをあげるべきか否か!!』
男「ううーん」
女『あなたなら、どっち!?』
男「懐かしいな」
女『どっち!?』
男「義理であげとけば?」
女『……』
女『義理じゃないの……複雑なの……』
男「なんで俺の言ったことがわかるんだよ」
女『あなたにあげたいなあ』
男「もらえるもんならもらいたいよ……」
217:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:27:47.764ID:8y3a+Cnxa.net
女『手作りって、重いかなあ』
男「別に、いいんじゃね」
男「手作りで義理チョコ作る人だっているだろ」
女『……』
男「あ、手作りはやめとけ、わりとマジで」
女『頑張ってみようかな!!』
男「やめとけって」
女『よし、材料買ってくる!!』
男「あああ、もうオチが見えちゃう……」
218:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:29:06.802ID:8y3a+Cnxa.net
【20××.2.12 16:00】
女『手作りチョコってどうやって作るの!!』
男「……」
女『なんでレンジの中がチョコまみれになるの!!』
男「……」
女『湯せんってなに!!』
男「……」
女『もうやだ!!』
男「ど、ドンマイ」
女『買ってきたチョコ配るもん!!』
220:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:30:23.003ID:8y3a+Cnxa.net
―20××.2.14―
編集「先生、なかなか反応いいですよ」
男「あ、本当ですか?」
編集「ええ、次の週が楽しみだってファンレターが、去年の倍届きました」
男「へえーえ」
男「なんか実感わかないですね」
編集「あはは、これから実感することになりますって」
男「だといいんですけど」
編集「あ、先生、これ」
男「え?」
編集「バレンタインですので、ね」
編集「チョコレートです」
男「あ、ありがとうございます」
223:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:32:40.233ID:8y3a+Cnxa.net
編集「ふ、深い意味はないので……」
男「そうですか……」
男「……」
編集「……」
編集「あ、すみません、迷惑だったら」
男「いや、頂きます」
男「嬉しいです、ほんとに」
編集「え、えへへ」
男「甘いもの、好きですし」
編集「よかったです♪」
225:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:34:20.931ID:8y3a+Cnxa.net
【20××.2.14 20:00】
女『おいっす』
男「おいっす」
女『チョコ配ったら、みんな喜んでくれたよー』
男「おれも一個もらったぜー」
女『お返し楽しみ♪』
男「……」
男「お返しか……考えてなかった」
女『ま、こういうものは気持ちよ、気持ち』
男「そうだよな」
226:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:35:40.573ID:8y3a+Cnxa.net
女『あなたはいくつもらった?』
男「一個だよ」
女『ファンの人からもらったりしないの?』
男「んーそういうのは届いてんのかなあ」
男「男か女かわからないようなペンネーム使ってるしね」
女『お返しはしっかりしなきゃダメだよ!!』
男「へいへい」
女『真心!!』
男「はいはい、真心ね」
女『ままごとじゃないよ!!』
男「はいはい」
227:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:37:08.626ID:8y3a+Cnxa.net
……
男「はあーあ」
編集「どうしたんですか、先生」
男「ああ、ちょっと煮詰まっちゃってね」
編集「はあ……」
編集「でも、まだストックはあるんですから、そんなに焦らなくても」
男「ねえ、これ面白い?」
編集「え」
男「これ、面白いかな」
編集「ええ、私は面白いと思いますよ」
男「僕も、この世界観はとても気に入ってるんだ」
編集「ええ、いいことですね」
229:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:38:24.520ID:st/weT1U0.net
いいことですよまったく
230:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:38:27.712ID:8y3a+Cnxa.net
男「じゃあさ、読者は何を求めてるのかな」
男「この小説に」
編集「え……」
男「ハッピーエンド? どんでん返し? 鬱な展開?」
男「それとも思いっきりSF方面に進んじゃう?」
編集「あ、ええと、鬱な展開は先生のカラーではないかと」
男「僕のカラーの話じゃなくてさ、この小説はどう終わるべきか、って話」
編集「ええと、私のような意見が参考になるとは思えませんが……」
男「いいんです、言ってください」
231:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:39:43.801ID:8y3a+Cnxa.net
編集「これ、読者は主人公の男性に感情移入して読むわけですよね」
男「多分ね」
編集「となると、相手の女性がとても気になるわけですよね」
男「うん、そうだね」
男「僕も、そうだ」
編集「え?」
男「ああいや、気にしないで」
編集「ですから、相手の女性はもともと知っている人間のうちにいるってのはどうでしょう」
男「つまり、どんでん返し系だね?」
編集「ええまあ、私の個人的な好みの問題なんですが」
男「でも、そうなると声で気づかなかったってことだよね」
編集「うう、やっぱり苦しいですかね」
232:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:41:01.186ID:8y3a+Cnxa.net
男「僕の頭から離れないバッドエンドがあるんだけど、一応聞いてくれる?」
編集「え、ええ」
男「男は毎日テープを聞いているうちに、自分の生活と彼女の話に違和感を感じ始める」
編集「……」
男「彼女が話す内容と現実に少しずつずれが生じるというか」
編集「……」
男「そこで確かめてみると、彼女はずっと病院にいたことがわかる」
男「テープはずっと病室で録音され続けていたんだ」
編集「……」
男「っていうものなんだけど、どうだろう」
編集「……」
233:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:42:18.235ID:8y3a+Cnxa.net
編集「先生らしくありません」
男「いや、僕らしさはこの際どうでもいい」
男「この終わり方は、受け入れられるだろうか」
編集「そうですね、面白いと思います」
男「そうか……」
編集「でも、先生は書きたくないんでしょう?」
男「ん」
編集「書きたくないものは、書かなくていいんじゃないでしょうか」
男「ありがとう」
編集「でも先生が選んだストーリーなら、私はいいと思いますよ、なんでも」
234:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします: 2018/10/11(木) 06:43:33.871ID:8y3a+Cnxa.net
男「もう一つあるんだけど」
編集「それも、バッドエンドですか?」
男「ええまあ、そうですね」
編集「どんな?」
男「途中まではちゃんと家での録音で、タイムカプセルは正常に作動しているわけですが」
編集「正常に作動……面白い表現ですね」
男「いつからか、彼女の未来日記になってしまうんです」
編集「つまり……書いてある日付が嘘、ということですか」
男「うん」
編集「それで、彼女は」
男「最後のテープを録音した後、死んでしまうんです」
編集「……」