19:名無しさん@おーぷん: 2018/07/08(日)21:58:30N1t
ーーーーーーーーーー入院までーーーーーーーーーーーーー
廊下の一角にある待機所まで運ばれた。
しばらく待っていると、母親と医者が来た。
俺と母親は、俺がどういう状態になっているのか、
医者に訊ねた。
どの程度のダメージなのか、俺自身さえまだ知らんのだ。
「開放骨折ですね。折れた骨が筋肉と皮膚を突き破って、
外部に露出するタイプの骨折です。
今は傷口をふさいだので、出血の心配はありません。
ただ、開放骨折は感染症を併発するリスクが高いんですよ。
骨髄に雑菌が侵入して骨隨炎になったら、
早急に対処しないと、
全身に雑菌がまわって死んでしまいます。
もし、骨髄炎になったら、全身に雑菌がまわる前に……
……左足を切断します!」
左足切断! マ、マジか!? 洒落にならん事態なんだけど。
俺は内心かなり焦った。
「まあ、傷口は徹底的に消毒しましたし、
抗生物質の投与も行っているので、
そうなる事はまずないですけどね」
な、なんだよ……それを先に言ってくれよ。
マジで焦ったんだが。
こんな話をしている内に、
自衛隊中央病院に入院する話が決まった。
1ケ月は入院する事を覚悟してほしい、と医師から言われた。
実際、1ヶ月入院する事になったので、
医師の言った事は正しかった。
20:名無しさん@おーぷん: 2018/07/08(日)22:01:10N1t
ーーーーーー具体的にどういう怪我なの?ーーーーーーーーー
1.左足の脛骨開放骨折
骨が筋肉と皮膚を突き破り体外に露出する骨折。
骨折した部位はすね。
開放骨折は、傷の大きさや傷口の汚染度によって、
危険性が3段階に分かれる。
俺の場合は、最も危険性が低い段階だったそうだ。
開放骨折の中では危険性が低いと言っても、油断できない。
骨折全般の中では、開放骨折はかなり危険な骨折である。
骨髄という感染症に対し無防備な部位が、
体外に露出するので、
危険な感染症を併発する可能性があるからだ。
普通、開放骨折になった人は、
激痛で暴れたり失神したりするそうだが、
俺の場合は無痛だった。
2.左足のひざの皿が真一文字に割れた
これは、入院してからCTスキャンで調べて判明した。
ひざの皿が割れて上下に分かれてしまった。
3.左足の膝蓋腱断裂
これは縫ってもらったから、すぐに直った。
多少、後遺症が残るそうで、
重登山やサッカーみたいな足に大きな負荷がかかる事は、
やめたほうが良いと言われた。
まあ、そんなアクティブなことしないけど……
21:名無しさん@おーぷん: 2018/07/08(日)22:01:33cTb
中病に運びこまれたのが不幸中の幸いだったね
彼らは優しいからね
22:名無しさん@おーぷん: 2018/07/08(日)22:03:10N1t
>>21
事故現場の最寄が中病だったんだ
民間の大病院より親切だった印象
23:名無しさん@おーぷん: 2018/07/08(日)22:04:26N1t
ーーーーーー自衛隊中央病院の1日ーーーーーーーーーー
自衛隊の施設なので、自衛隊時間が流れている。
一般人も自衛官と合わせて暮さねばならない。
6時・起床。起床後は血圧と体温を測って報告する。
7時・朝食
朝食が終われば、午後まで自由時間となる。
12時・昼食
14時頃・毎日リハビリに行く。これは1時間くらい行う。
15時頃・2日に1回のペースでシャワーを浴びる。
18時・夕食
22時・消灯
結構、空き時間があるので、本やスマホがないとつらい。
自分の場合、ドストエフスキーの小説をひたすら読んでいた。
「カラマーゾフの兄弟」を読破。「白痴」を途中まで読んだ。
24:名無しさん@おーぷん: 2018/07/08(日)22:13:27N1t
ちなみに、骨折と全身麻酔と手術は
この一件で初めて体験する事になった
32年間生きて来て
骨折も全身麻酔も手術も未経験なのは、運が良かったのかもしれない
命の危険があったのは今回が初めてじゃなくて
小学校1年生の頃に、「川崎病」という感染症にかかった
このときも1ヶ月くらい入院してたけど
ガキだから長時間読書は出来ないし、当時はスマホもないから
ひたすらゲームボーイ(初代)をやってた
気楽に過ごしてたけど、病気の発見が3週間遅れていたら
高確率で死んでいたという話だ
川崎病は重い風邪と誤診されやすいので、発見が遅れる場合も多いという
幸運にも誤診しなかった開業医の観察眼が優れていたのだろう
すぐに大病院に入院しなさいと指示された
25:名無しさん@おーぷん: 2018/07/08(日)22:15:31N1t
ーーーーーー1週間目ーーーーーー
病棟は東西に分かれており、フロアごとに番号がある。
それらによって略称が決められている。
たとえば、6階の東病棟なら「6東」、
7階の西病棟なら「7西」といった略称となる。
自分が入院している病棟以外に行ってはいけない。
突然、尋常でない高熱になった。
体温が39℃前後から下がらない状態が、ずっと続いた。
「普通、骨折すると発熱しますよ。開放骨折だと尚更です」
医師にとっては想定の範囲内のようだ。
氷枕で頭を冷やしても、意識がもうろうとする。
本やスマホなど見られる状態ではなかった。
最初の一週間は、ベッドの上でオーバーヒート状態。
食事と排泄以外は何も出来なかった。
骨折部がしびれる感じが続いたので、
ロキソニンをもらって服用した。
そうしたら、すぐにしびれが取れた。
ロキソニンの効き目はすごい。
まるで現代のエリクサーだな。
週末には、
左足に人工骨を埋め込む手術が予定されていたが、
予定通りに事は進まなかった。
医師が言うには、血液検査の結果が悪いという。
「傷口の状態は綺麗なので、我々も解せないんですけどね。
炎症反応が全然治まらないのですよ。
この状態で人工骨を入れるのは危険ですね。
人工骨が雑菌の温床になる可能性が高いから。
一度切開して、骨折部を消毒する手術をしましょう」
これが人生で初めての手術となった。
手術の際には全身麻酔を使ったが、それも初体験だった。
26:名無しさん@おーぷん: 2018/07/08(日)22:15:54N1t
手術の前日。
麻酔科医が来て
「初めての全身麻酔だそうですが、怖くありませんか?」
と訊いてきた。
「正直、ちょっと怖い気持ちはあります。
意識に空白の時間が出来るのは、本能的に怖い事ですからね。
でも、リスキーな手術じゃないのでマシだと思います。
心臓や脳の手術だったら怖いですけど、
切っていじるのは足ですからね」
俺の感想を聴いて、麻酔科医は安心した様子を見せた。
手術の日。
ストレッチャーに乗せられて手術室まで移動した。
ストレッチャーから手術台に俺を移乗させる時は、
滑らかで柔らかい素材、水着みたいな素材で出来た
プラスチック製の板を使った。
全身麻酔が投与された。
どうなることやら、と考えている時間もない。
瞬きして目を開けたら、全てが完了していた。
宇宙船が出て来るSF映画では、
「冷凍睡眠」というのがよく出て来るが。
それが実際にあったらこんな感じだろうな、と思った。