216 :5/9:2013/03/07(木) 23:09:52.35 ID:bthiYXPN0
一体この一本道はどこまで続くのだろうか・・・
そう思いかけたころ、道の前方に黒い建物がうすーく小さく見えた。
近づくにつれ、それはどんどんと大きく見えてきて形をはっきりとあらわし始めた。
どうやら茅葺きの建物のようだ。
・・・が、それがただの茅葺きの建物ではないことはすぐにわかった。
異常に大きいのだ。こんな大きさの茅葺きの建物は見たことがない。
学校の体育館くらいの大きさ、いや、それ以上の大きさだろうか。
なぜ封鎖された道の奥にこんなに立派な建物が建っているのだろうか。
しかも、その建物の前まで到着してわかったことだが
今まで来た道はこの建物へ通じる一本道であり、途中に分岐など一切ないこと。
この建物がこの道の終着点になっていたこと。
廃村だと思っていたが、それらしき集落もなく、この建物が1つだけあって
今きたこの道は、この建物へ通じるためだけの道だとしか思えないのだ。
俺達は車を停めて外に下りてみた。
なんというか、こんなに清々しい気分になるものなのかと思った。
空気は澄み、空は雲ひとつなく青々とし、鳥や風の音も聞こえない。
春先のようなちょうどいい気温で、ずっとここにいたいと錯覚しそうになったが
目の前の馬鹿でかい茅葺きの建物がそれを打ち消した。
この建物は一体何なのだろうか?
茅葺きの建物は、手入れをしないと痛んでしまうと聞いたことがあるが、これはそうは見えない。
古く、全体的に黒ずんだ木造ではあるが、朽ち果てた感じはまったくない。
誰かが今でも利用しているのだろうか?
217 :6/9:2013/03/07(木) 23:10:31.06 ID:bthiYXPN0
「中、見てみるか」
俺が提案すると、Kはそうしようと乗ってきたがSは乗り気ではないらしく
とりあえず建物をグルっと回ってくるわと言って歩き出してしまった。
建物の戸は重かったが鍵はかかっておらず開けることができた。
中を覗いてみるとカビ臭いような古臭いような独特の臭いがする。
「すいませーん!誰かいますか?」
・・・何の返事もない。当然といえば当然だ。
やっぱ誰もいないんだと少し安心した俺とKは中へ入ってみた。
薄暗いものの、隙間からの光と入り口を開けた光で中の様子が伺える。
板張りの、だだっ広い空間が広がっていた。棚らしきものが壁際に見えるが、何も入ってない。
その左側の壁には引き戸があり、その向こうにさらに部屋があるようだが、それ以外は何もなくて
床と壁しかない。上は暗くてよく見えないが天井裏まで全部吹き抜けているようだ。
少し勇気がいったが、その引き戸を開けて見ることにした。
ここまで来たら調べないと気が済まなくなっていた。
「すいませーん、誰もいませんね!?」ともう一度確認してから
恐る恐る引き戸を開けると、中が意外にも明るくてギョッとした。
採光窓のようなものが上部に無数設けてあるらしく、入口側のこちらの空間よりも明るい。
しかし、その部屋が、明るいだけでなく異常なものであることにすぐに気がついた。