214 :3/9:2013/03/07(木) 23:08:05.47 ID:bthiYXPN0
正直、悪いことをしているという感覚は全くなかった。
金網は戻ってきてから針金で繋ぎ直せばいいし、それになにより
こんな封鎖された道を車でそう長くいけるはずはないと思ったからだ。
さっきの道でさえ草が生え小石が散乱していたのだ。
この道などちょっと進んだだけで倒木が道を塞いでいて進めなくなるだろう、そう思っていた。
ところが、意外にも予想してたような荒れ果てた光景はあらわれず
なんだったらさっきの道よりも小奇麗なほどだった。
俺達はそのまま車で細い山道を5分ほど慎重に走り続けた。
しばらくすると、目の前にトンネルがあらわれた。
トンネルと言うよりは、下をくぐれるようにアーチ状にくり抜かれた
レンガ造りの水道橋と言った方がいいかもしれない。奥行きも4~5mくらいしかない。
幅も、ジムニーが通るには問題ない広さで俺たちはそのまま車でそこをくぐった。
通り抜けると道がちょっと荒れ始め、アスファルトの上に石が散乱しはじめた。
不意にSが声を上げた。
「おい、ちょっと止めろ、あれ見ろ!」
Sが指を指していたのは車の後方、さっきくぐり抜けたトンネルの方向だったが
見ると、トンネルの出口をまたぐように、鳥居が建っていたのだ。
神社にあるあの鳥居が、トンネルの出入り口に密着するように立てられている。
向こう側からは全く見えず、トンネルをくぐると自動的に鳥居も通るようにできてるとしか思えない。
何となく気味が悪くなった俺達は、戻るかどうかためらったが、とりあえず行けるところまで行こうということになった。
215 :4/9:2013/03/07(木) 23:09:01.60 ID:bthiYXPN0
そこからさらに500mくらい進んだところだろうか。これまでは荒れてはいたものの
アスファルトが敷かれていた道が、境界線を引いたように途切れ
そこからは舗装されてない土の道がずっと続いていた。
気味が悪いことに、そのアスファルトと土の道の境界線の両端に
ちょうど祠みたいなものが2つ設置されていて、それを堺に手前がアスファルト、
奥が土の道みたいに見えた。
このころになると、この先に何かあるんじゃないかという期待感と
不安とワクワクが入り混じった気持ちになり、引き返そうという気持ちはなくなっていた。
幸いにも、土の道になってからも道幅は変わらず、木が倒れていて通れないということもなかった。
ただ、今思えば車輪の轍が全くなかったことや、封鎖されていた道にしてはキレイ過ぎることを
そのときに気づいておくべきだったかもしれない。
しばらく進むと、今までの山道がうそだったかのように開けた場所に出た。
俺達の車が進む道以外、左右一面平野しか見えない。田んぼのようにも見えるが
使われている形跡も見当たらない。いつの間にか空も雲ひとつなく青く澄みわたっているので
思わずその景色の素晴らしさに感動してしまったほどだった。
しかし、ふと我に返って思った。
いったいここはどこなのだろうか?
封鎖された道の奥にあったのだから、廃村か何かか?
俺達が普段生活してる所からそんなに離れた場所にあるわけじゃないところに
こんなに広々としてきれいな土地があったのかという事が不思議なような驚きのような感じだった。