両親の離婚&怪我で部活人生終了➡︎絶望していた俺にやってきた忘れられない夏

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622:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 20:34:42.28ID:PVGs7r0u.net
ここ一週間は、俺もその大切な3年間の一部になっていたのだ。
そう考えると、なんだか少しだけ胸が温かくなった。
そして俺自身も、
自分のやり遂げられなかった3年間を重ねあわせていたのだと、強く思う。

そして体育館を出る時、奈央は俺に向かって
「私、気合入れてくるからね」と言って家の鍵を手渡した。

それはつまり、「先に家に帰ってて」といういつものやりとりだったのだが、
気合を入れるってどういうことだ?と言葉の意味までは汲み取れなかった。

623:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 20:37:38.33ID:PVGs7r0u.net
夕方、家に帰って来た奈央は生まれ変わっていた。
肩甲骨まではあったであろう長い髪を、
さっぱりとショートヘアにしていたのだ。

居間でばったり奈央と顔を合わせて、
その変貌ぶりに俺の心臓は大きな音を立てた。
奈央「ただいま」
俺「おお…おかえり」

624:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 20:41:28.79ID:PVGs7r0u.net
ここまでイメージを変えた女の子相手に、
何も言わないというのもアレだなと思い、
俺は恥ずかしくて目が回りそうだったが、勇気を出した。

俺「すごく短くしたんだね。似合ってるよ」
そう言うと奈央は「ふっ」と吹き出して笑い、
「ありがとう」と言ってくれた。

奈央「そんな真面目に言われると、変な感じだね」
奈央はそう言って自分の髪を触り、はにかむような笑みをこぼしていた。

625:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 20:42:38.52ID:PVGs7r0u.net
パート帰りでキッチンにいたおばさんにも
「あら!そんなに切ったの!素敵じゃない」と言われていて、
奈央は上機嫌なようでニコニコしていた。

正直、奈央がどんな心境で髪を切ったのかは分からない。
だけど、髪を切った奈央の表情は「何かを決意した」ものに見えた。

白い首筋が見えるようになってスッキリとした奈央の顔からは、
強い気持ちが溢れ出していた。

626:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 20:46:20.21ID:PVGs7r0u.net
そして、夏季大会当日となる。
会場は隣町の高校で、そこまでは自転車で向かう。

一度自分たちの高校に集合した際、奈央がチームメイト全員に囲まれて、
「奈央先輩どうしたんですか!」
「めっちゃ可愛いじゃーん!短いの似合うねー!」
「気合入れてきたねー」

と髪型に関しての反応がマシンガンのように飛び交っていた。

627:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 20:47:41.99ID:PVGs7r0u.net
よく晴れた晩夏の日だった。
奈央の3年間の想いが結実するには、うってつけの日だった。

視界が狭くなるような真っ白な日光に、街中が照らされていて、
何もかもが落ち着かないように見えた。

夏の終わりだったからだろうか。
俺の胸も、朝から高く波打っていた。

628:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2015/11/22(日) 20:50:38.24ID:Vkv2SBO3.net
視界が狭くなるような真っ白な日光に、街中が照らされていて、
何もかもが落ち着かないように見えた。

なんだこの描写は
圧倒されるな

630:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2015/11/22(日) 20:58:40.84ID:X7f1dezK.net
>>628
表現がすごいよね
惹き付けられる…

629:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 20:51:24.31ID:PVGs7r0u.net
夏季大会の会場に着いて、体育館の外で部員たちが集合する。
円陣なんか組んで、奈央の声が高らかに響いた。
「今日は、思いっきりやって、最後まで楽しもう!」

「おーーー!」部員全員のかけ声が青空の中に吸い込まれていった。

その中に、俺もいた。
眩しいはずの太陽を何故か見上げてしまって、
「すげえ光だな」なんて思った。
でも、その光の当たる場所に、俺も立っていた。
奈央たちと一緒に。

631:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:00:36.81ID:PVGs7r0u.net
体育館の中は、独特の試合前の雰囲気に包まれていた。
俺も、何度も感じてきた雰囲気だ。

朝早く、体中にエネルギーとやる気が漲った状態で行う対人。
不思議な高揚感に包まれて、何にでもなれるんじゃないか、とさえ思える。

ふと、奈央がボールを抱えたままコートの脇に立ち尽くしていた。
カットしてすっかり短くなった髪の毛を、さらに結んでいた。

632:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:02:11.28ID:PVGs7r0u.net
俺「どうかした?」
奈央「ううん……」
奈央はそう言って、その場を動こうとしない。

俺「緊張、してるのか」
奈央「うん…」
奈央はこわばった表情で頷いた。

633:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:03:40.80ID:PVGs7r0u.net
俺「なあ、奈央」
奈央「え…?」
俺「今何が聞こえる?」
俺の質問が唐突だったのか、奈央は眉根を寄せて首を傾げた。

俺「シューズのこすれる音、ボールを弾く音、スパイクから着地する振動、かけ声…」
俺「この全部が、バレーだよな」
奈央は不思議そうに「そうだね」とこちらを見た。

634:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:05:17.15ID:PVGs7r0u.net
俺「すっごくいいものじゃないか」
奈央「うん…まあ」
俺「この中にいるだけで、ワクワクしてくる」

そう言っている間も、奈央のチームの後輩たちが
「オッケー!!」と笑顔でかけ声を上げていた。

俺「色々考えるな。この雰囲気を、楽しんでこい」
俺「今日で最後なんだ」

俺がそう言うと、奈央はしばらく体育館の中を見つめていた。
まるで大切な何かを優しく見守るような、そんな表情だった。


635:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:08:23.78ID:PVGs7r0u.net
奈央にかけた言葉は、そのまま自分にかけたような気もした。
バレーをやるはずだった三年間。

途中で途切れた俺の夢。
俺のしたかったこと、見たかったこと、それは――

636:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:09:27.70ID:PVGs7r0u.net
夏季大会の参加チームは7チームで、1チームがシードだった。
抽選の結果、奈央の高校がシードとなり、初戦は2回戦となった。

「一回勝てばそのまま決勝にいける」
部員全員が色めき立っていて、不穏な雰囲気があった。

加えて、俺もコーチとしてコートの横で指示をするのは初めてで、
うまく采配をとることができなかった。

結果、初戦は無残にも惨敗してしまった。

637:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:10:34.08ID:PVGs7r0u.net
俺も慌ててしまいろくなアドバイスができず、
奈央も緊張からか上手く動けず、
結果、チーム全体の調子が下向いてしまい、
全く良いところがなかった。

638:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:12:25.45ID:PVGs7r0u.net
試合後、外に集合した部員たちはみんな真っ暗な表情だった。
どうしたものか…と考えていた時、澄んだ声が響いた。

奈央「まだ次があるよ」
奈央の輝いた表情は、この湿った空気を吹き飛ばした。

奈央「3位決定戦があるから」
奈央「最後まで頑張って、そこで勝とうよ」
奈央「まだ、終わりじゃないんだから」

負けてしまい、心底落ち込んでるかと思った奈央が、
一際煌めく表情で、部員たちを鼓舞していた。

639:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:14:26.53ID:PVGs7r0u.net
千景「そうですよ!みんな、最後まで頑張りましょう!」
「そうだよね、まだ次があるから!」
「最後まで諦めないで頑張ろ!」

奈央の気持ちが、チームを本来の「あの雰囲気」に戻していた。

俺はその光景が嬉しくて、黙って眺めていた。
奈央、えらいぞ。
お前の頑張り、バレーを想う気持ち、それは絶対に返ってくる。
そんな事を思いながら。

640:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:16:33.22ID:PVGs7r0u.net
集合が解かれて、部員たちが体育館の中に帰って行く時だった。
奈央が一人で空を見つめたまま立ち尽くしていた。
昼下がりの、強い光を帯びた空だった。

俺「奈央、何してんだ」
俺が声をかけると奈央は笑みを浮かべてこちらを見た。
風が吹いて、奈央の短くなった前髪を揺らした。

俺「奈央?」

641:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:22:49.41ID:PVGs7r0u.net
奈央「最後まで、頑張るからね」
奈央はそれだけ言い残し、そのまま体育館へと戻って行った。

その奈央の姿が印象的で、俺はしばらくその場から動けなかった。
奈央の澄み渡ったその表情は、俺の胸を強くとらえたのだった。

昼過ぎの良い時間帯、3位決定戦が始まった。
初戦と違って、奈央もみんなも落ち着いているようだった。
俺もドキドキはしていたが、これはすぐに「期待」の高鳴りだなと悟った。

642:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:31:23.24ID:PVGs7r0u.net
俺のここに来てからの全て、
そして奈央の3年間の全てが、この一瞬に詰まっていた。
泣いても笑っても、もう最後なのだから。

「ピーーー」と主審の笛の音が体育館に響いて、
両校の選手がネットに近寄る。

俺もコート脇の監督席から、控えの選手とその様子を眺めていた。
手を叩いて、「よっしゃいこう!!」と声をあげた。
コートの中で千景も思い切り声を上げ、エンジンがかかった。

643:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:35:35.84ID:PVGs7r0u.net
試合開始の瞬間、サーブカットを構える奈央と目が合った。
俺は頷いて、「いけ」と声をかけた。
奈央は真剣な眼差しで俺を見つめて、深く頷いた。

試合は3セットマッチで、先に2セットとった方の勝ちだ。
一発目のサーブカット、千景が良いキャッチをし、
セッターの子の元へ最高のレシーブが返った。

644:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 21:57:14.53ID:PVGs7r0u.net
トスは奈央の待つレフト方向へと飛んでいき、
チーム全員が「奈央!!」と叫んだ。
俺も身体の底から「奈央、いけぇ!」と叫んだ。

高く跳んで打ち込んだ奈央のスパイクは、
ブロックの間をすり抜け、相手コートに叩きつけられた。

瞬間、ワッ!と歓声が起こり、体育館中が沸き立つ。
体中の毛穴が開くような、そんな興奮の一瞬。

645:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:02:51.18ID:InSBrJXx.net
奈央!千景!頑張れ!
房江も悦子も和子も克枝も負けるな!

646:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:06:53.37ID:PVGs7r0u.net
俺「よっしゃいいぞぉ!!」
思わず大きなガッツポーズをしてしまう。
それに続いて、控えの子達も「オッケー!」と言って立ち上がる。

コートの中を走り回る奈央は満面の笑顔だ。
千景がベンチの子たちに向かって嬉しそうに手を振った。

奈央たちのチームの良さがふんだんに出ていた。
これなら、きっといける……

647:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:11:05.13ID:PVGs7r0u.net
一発目の奈央のスパイクで調子を得たのか、
1セットはスムーズに取ることができた。
戻ってきたレギュラー陣を全員で鼓舞する。

俺「いいよ!この調子だ!!」
俺「楽しんでいこうな!」

円陣を組む部員全員に向かって渾身のかけ声をかける。
「はい!」ときらきら輝く表情が返ってくる。

俺が「いこうか!」と言うと
奈央が「2セット目もこの調子でいくよ!」と叫んだ。
「おー!!」というかけ声が力強く響いて、
俺も「おし」と拳を強く握った。

648:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:14:54.72ID:PVGs7r0u.net
2セット目も出だしは調子が良かったが、
千景のレシーブミスをきっかけに、徐々に調子を崩してしまった。
全員の奮闘も虚しく、2セットは僅差で落としてしまった。

しかし、みんなの様子は一つ前の試合とは違った。

奈央「サーブカットがちょっと乱れてきてるね」
千景「そうですね…私のミスがちょっと…」
奈央「ううん、大丈夫。切り替えていこう!」
「はい!」

649:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:16:03.49ID:PVGs7r0u.net
この状況になっても奈央もみんなも、笑顔を絶やさなかった。
そうなんだ。
バレーは楽しい。そういうものなんだ……
きっと、ずっと、そうで…

そんな事を思って感極まり、しばらく黙って見守っていたが、
すぐに声をかけた。
俺「カットの時は、姿勢を低くして、膝は足首の前、だよ」
「はい!」

俺「大丈夫、決して流れは悪く無い」
俺「みんな、すげー頑張ってるもんな?」
「はい!」

650:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:23:30.43ID:PVGs7r0u.net
俺「次のセットが、本当に最後なんだ」
俺「みんな、楽しんでいこう!」
俺がそう言うと、全員の「はい!」という力強い声が響いた。

最終セットが始まる直前、奈央が俺の前に立っていた。
ぐっと拳を握って、小さなガッツポースを作ってみせた。
奈央「楽しんでくる」
にこっと笑って、そのままコートの中へと駆けていった。

651:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:27:29.03ID:5wQ7Ysjm.net
わくわく

652:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:29:57.69ID:PVGs7r0u.net
瞬間、風が吹いた気がした。
実際に吹いたかは分からないし、「吹き始めた」という方が、
正しかったのかもしれない。
ただ、本当に俺の心の中に熱い風が通り抜けた気がした。

最終セットは大接戦だった。
15点マッチの短い試合が、あっという間に15-15となった。
ここまで来ると、体育館の中には大勢のギャラリーがいて、
両校の応援も鬼気迫るものとなる。

653:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:33:52.88ID:PVGs7r0u.net
そんな切迫した状況の中で、こちらのサーブが失敗してしまい、
15-16のスコアとなった。

あと1点とられたら―
チームの雰囲気が重くなって、大きなプレッシャーがかかる。

エースの奈央は後衛にいた。
全員が気を落としたその瞬間だった。
奈央「大丈夫だよ!諦めないでいこう!!」
奈央の今日一番のかけ声が、コート上でこだました。

654:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:40:33.15ID:PVGs7r0u.net
俺もはっとして、「大丈夫だ!!一本とるぞ!!」と声を出した。
千景もそれに気づいて、「一本一本!落ち着いてこー!」
と声を上げた。

笛が鳴って、相手チームの痛烈なフローターサーブが飛んでくる。
千景が思い切りフライングし、コートに転がりこんでキャッチした。

場内に「おお!」とどよめきが湧いて、
チーム全員が「あがったー!!」と声を枯らして叫んだ。

655:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:44:24.54ID:PVGs7r0u.net
セッターの子が懸命にトスを上げて、センターの子がフェイント気味に返した。
そのフェイントが相手の虚を突き、1点返すことに成功した。

「うわあああ!!」と歓声が湧いて、
流れが一気にこちらへと戻ってきた。
俺「よっしゃぁ!ナイスファイト!!」

656:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:50:03.97ID:PVGs7r0u.net
滑りこんでレシーブを上げた千景は、コート上で仲間に囲まれて笑顔だった。
16-16だ。

1点返したことで、後衛にいた奈央が前衛へと戻ってきた。
俺「よっしゃ、もっかいこっから!落ち着いていこう!」

俺はコート上に立つ6人に、懸命に声を送り続けた。

657:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:55:02.76ID:PVGs7r0u.net
こちらのサーブが通って、相手コートでレシーブが上がる。
しかしトスが乱れて、相手のスパイクミスとなった。

悲鳴にも似た歓声が湧き上がって、
奈央たちはコートの中で飛び跳ねて喜んだ。

ベンチにいた俺も、控えの子も、「おっしゃぁ!」と言って叫んでしまった。
17-16。
あと、1点だ。
あと1点で、全てが…

658:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 22:59:37.03ID:PVGs7r0u.net
笛が鳴る。こちらのサーブは綺麗に相手コートに飛んでいき、
綺麗にレシーブが上がった。
強いスパイクが返ってくる。

しかし千景が上手くカバーにまわり、
運命的とも言える綺麗なレシーブがセッターの元へと上がった。

奈央「レフトォ!」
レフトでは、奈央が待っている。

体育館の中にいる全員が奈央を見ていたかもしれない。

659:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 23:03:29.00ID:PVGs7r0u.net
俺は「奈央、いけぇ!!」と叫んだ。
奈央の待つレフトに、綺麗なトスが上がった。
心臓が、バクリと大きな音を立てた。

体育館じゅうの熱視線と光を浴びた奈央が、高く飛んだ。
まるでストップモーションのように、コマ送りで時間が進んだ。

奈央が打ったスパイクは、
相手コートに叩きつけられた。
その瞬間、全てが爆発したかのように、
「わっ!!」と歓声が巻き起こった。

660:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2015/11/22(日) 23:08:30.58ID:X7f1dezK.net
すげえな…
光景が目に浮かぶ

661:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 23:09:17.04ID:PVGs7r0u.net
スパイクを決めた奈央は、コートを駆け回って声を上げた。
ピィ、と笛高らかにが鳴って、奈央たちが勝利したことを告げた。

奈央はコートの中で涙目になり、まるで真夏の太陽のように、
溢れんばかりの笑顔をこぼしていた。
その太陽のような笑顔が、俺の心を照らした。

662:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2015/11/22(日) 23:11:21.07ID:InSBrJXx.net
よっしゃ!勝った勝った!

663:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 23:11:59.47ID:PVGs7r0u.net
瞬間、その光で俺の未来が見えた。
俺は、はっきりと気づいてしまったのだ。

この一週間、どれだけ楽しくて、
今この瞬間、自分がどんな想いを抱いているか。

夢が、できた。
奈央の笑顔が、俺の夢への道を明るく照らした。

664:1 ◆aPqsLiX.0g @\(^o^)/: 2015/11/22(日) 23:16:10.62ID:PVGs7r0u.net
挨拶が終わって、奈央たちが監督席の俺の前に集まってくる。
奈央は、もうぼろぼろと泣いてしまっていた。

奈央「うぇぇ…やったぁ…」
「先輩…」
奈央が泣くのにつられて、他の部員もどんどん泣き始めている。
俺まで、涙目になってしまった。

俺「みんな、本当によくやったよ」
目を真っ赤にしたみんなが、俺の方を見ていた。

俺「特に、3年生」
俺「今日の試合は…いや、バレーは楽しかった?」
俺がそう言うと、3年生たちは仕切りに目をこすって泣き始めた。