聞こうとも関わろうともしてなかったので、本当に何も知らなかった。
それから10年以上も経った。
幼馴染の失踪から数年で幼馴染の両親は引っ越した。
近所にひそひそ噂をされることが辛かったのかもしれない。
うちの母親にまで話を聞こうとする人がいたぐらいだから。
ある日、自宅の郵便ポストを覗くと、私宛ての封書が入っていた。
宛名を見た途端に、それが幼馴染の書く字だと分かった。
封筒はダイレクトメールの封筒を再利用した物だった。
中身も便箋ではなく、雑に千切ったメモ帳か何かだった。
書いてあった文は、幼馴染の両親の安否と連絡先を尋ねるものだった。
幼馴染の、現在の連絡先も書いてあった。
字は走り書きのような乱雑さで、誤字をさっと線で消して書き直した跡もあった。
どう見ても、幼馴染が幸せで元気であるようには見えなかった。
その手紙をそのまま捨てた。
幼馴染の両親に連絡を取ろうと思えばできたと思う。
うちの母親と幼馴染の母親は年賀状のやり取りをしていたから。
幼馴染からの手紙はそれっきりで二度目はなかった。
時々今でも夢に見る。
もしかしたらあの時たまたま幼馴染が困ったいただけで、今は普通に生活してるかもしれない。
でも、どうしてもそう思えない。
多分あの時、私は幼馴染の命綱を切ったんだと思う。