85:1[]:2012/10/14(日) 13:53:02.66 ID:qz16+yn70
そして彼の卒業アルバム
その中の彼は一つも笑っていませんでした
いえ、正確に言えば笑っていたものもあったけど、それは心からのものではなかった
ページをめくる度に、彼の笑える場所はこのクラスになかったんだと実感しました
目の前で嬉しそうに私のアルバムを眺める彼と、アルバムの中で笑う彼
同一人物だとは思えなかった
そして何気なく見たアルバムの最後のページ
友達から手書きメッセージが貰えるように空白になっているページ
真っ白でした
86:1[]:2012/10/14(日) 13:56:53.46 ID:qz16+yn70
そのページを見ている私に気付いた彼は
「式が終わってすぐ帰っちゃったから、書いてもらう暇がなくて」と、
アルバムに写ってるまんまの笑顔で言いました
貼り付けたような笑い顔
放課後いつも一人で本を読んでいた彼を思い出しました
いつも一人で俯きながら帰っていた彼を思い出しました
お互いの抱えているものを語り合った時「少し寂しい」と言った彼を思い出しました
私はサインペンを取り出し、最後の空白のページに
「よく頑張りました!卒業おめでとう!!」とページいっぱいの大きな字で書きました
何でそんな事をしたのか自分でも解らない
完全に思い付きだったから
ただこのページを埋めてあげなきゃっていう衝動に駆られたんです
でも書いてる最中サインペンがキュッキュッて鳴る音が凄く気持ちよかった
彼に目を向けると、真顔でその文字を見つめていました
そして「ありがとう、ゆうちゃん」と真っ赤になった目を細めて笑いました
彼に初めて声をかけたあの夕日の帰り道、
私の行動は間違ってなかったのだと心から思いました
次のページに続きます…